【噴水台】卓庚鉉
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2008.06.02 14:40
「しばらく黙想に入っていた光山が突然、大きな声で歌い始めた。 アリラン、アリラン、アラリヨ、アリラン峠を越えて行く。絞り出すような悲痛の声だった。 トメと2人の娘も一緒に歌い始めたが、すぐに歌は消えて鳴咽が部屋の中を埋めた。 いつの間にか4人は肩を組んでいた」
1945年5月10日夜、日本鹿児島県知覧飛行基地付近の食堂「富屋」であった実話を描写したノンフィクション『ホタル帰る』(赤羽礼子著、2001年)の一部だ。 光山は翌日には不帰の客になる神風特攻隊員で、トメは彼が唯一親しみを抱いた行付けの食堂のおばさんだった。 次の日、光山は予定通り250キロの爆弾を戦闘機に積んで出撃、560キロを飛行し、沖縄の海上で25年間の短い命を終えた。
‘大日本帝国陸軍少尉 ’光山文博の本名は卓庚鉉(タク・キョンヒョン)だった。 知覧飛行場で天皇から受けた酒一杯に一機一艦の決意を固めて命を捨てた自爆特攻隊は計1036人だった。 その中には卓庚鉉をはじめ朝鮮人11人も含まれている。 卓卿玄は見習士官時代から朝鮮人であることを明らかにしていたという。 彼の魂は靖国神社にまつられ、時々日本首相の参拝を受けたりもする。 飛行帽を着用した彼の写真も神社の隅の遊就館に掛けられている。