【コラム】山林を耕して農地を作る中国
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2023.05.08 14:04
1998年夏、中国に100年ぶりの大洪水が襲った。水害現場に駆けつけた首相の朱鎔基は波頭が立つ堤防に上り「抗洪(洪水に勝とう)」を叫んだ。雨を浴びながら濡れそぼった半袖姿の首相が抗洪を絶叫し、長江に散った涙は中国人民の心を動かした。崩壊する堤防を人間の鎖で守った。しかし被害は大きかった。約3000余人の死亡者に1500万人の水害民が発生した。
何が問題だったか。どしゃ降りの雨は明らかに天災だったが途方もない死傷者の背後には人災があった。もともと河川の両側には広い遊水池があったが、人々が住み着いて畑を作るなどしていつの間にか生活の拠点となった。洪水になると多くの人命被害が出ざるを得ない構造だった。そのため出てきたのが「退耕還林」政策だ。農地を放棄して再び森を作ろうというものだ。
ところが20年以上にわたり進められてきた退耕還林政策が最近、逆の方向に進んでいる。昨年、ウクライナ戦争が起きて食糧安保問題が台頭したことを受けて森を切り開き農地にする「退林還耕」措置が推進されている。昨年の春、習近平国家主席は各地方政府に農地を徹底して保護するよう厳命を下した。その間の退耕還林政策にも、産業化と都市化の影響で耕作地は右肩下がりだったためだ。