民主主義と政治の花と言える交渉と妥協は消えて久しい。独走の狂乱があるだけだ。政治は失踪して久しい。総体的難局だ。

何より国政を導かなければならない尹大統領と与党の責任は重い。少数与党多数野党の局面で指導力は影も形もなく対話の試みすら珍しい。これでどんな協治と妥協を期待できようか。過去にはあれほどあった国家元老招請助言リスニングも消えたようだ。週６９時間労働許容など中途半端な政策を出しながら突然方向を変えたり推進力を失っていくケースも多くなっている。

だからと立法暴走する野党に免罪符が与えられはしない。巨大野党は多くの議席だけ信じて政府・与党との合意もなく立法権を武力行使している。野党陣営は議論の真ん中にある糧穀取引法を法司委も経ず国会本会議に直接回付し一方的に通過させてしまった。看護法・医療法改正案と放送法改正案、労組法改正案も同様の運命を歩くのが明らかに見える。民主党は味方の逮捕同意案は否決させ相手側の同意案は「雑犯」としながら通過させる強心臓を誇る。

尹大統領は与野党合意なく一方的に国会を通過した法律に対しては拒否権を行使するという方針だとされ立法と政権間の反目とあつれきは少なくとも新しい国会が始まるまでは続くだろう。これが何の政治なのか。これが何の民主主義なのか。だれに向けた、何に向けた権力闘争なのか。

政界の激しい対立の被害はそのまま国民に転嫁される。傲慢な政界が変わらなければ国民が、有権者が、政界を変えるほかない。巨大政党と政治家らの逸脱は票で審判しなければならない。韓国国民は政界がいくら列に並ばせようとしても並ばず、ポピュリズムで誘惑しても冷徹な判断をしなければならないだろう。合理的な中道層が厚くなるならば政界全体に峻厳な警告を投げかけられる。

「コリアディスカウント」という言葉がある。南北関係による地政学的不安要因などで韓国企業の株価が同水準の外国企業の株価に比べ低く形成されている現象を指す言葉だ。いまは政治家リスクがコリアディスカウントの最大の要因になっていないかと思う。どの国より政治と権力の影響力が大きい韓国で政治家らのゆがんだ姿は韓国の現在と未来に致命的弱点に違いない。韓国政治が国民と国益、企業に役立つのではなくむしろ「韓国ブランド」の価値を傷つけるマイナスとして作用しているのだ。あすのない戦いを行う政界が自ら反省することを期待するのは難しい。２０２３年の韓国政治は確かにお荷物だ。

ハン・ギョンファン／総括エディター

【コラム】コリアディスカウントと五流政治（１）