囲碁人工知能（ＡＩ）プログラムは、あってもなくてもそれだけだ。囲碁ＡＩはおカネを儲けるというより技術がどれくらい先んじているかを証明するための１つの手段に過ぎないからだ。

重要なのは今開かれ始めた人工知能関連産業で韓国がどんな位置にいるのかだ。遠からぬ未来にスマートフォン・家電から自動車や家に関連したすべての製品とサービスを掌握するものと見通されるＡＩだ。

その話をするには韓国囲碁ＡＩ「トルバラム（石風）」の話をするほかない。トルバラムは１９日に東京で開かれた「世界コンピュータ囲碁大会」に出てベスト８戦で脱落した。２０１５年の本大会で準優勝した後、毎年少しずつ順位が落ちている。１人でトルバラムを作っているイム・ジェボムトルバラムネットワークス代表（４６）は「生計用ソフトウェアを作るのにディープランニング技術を搭載させることができなかった」と話した。

もちろんトルバラムの墜落が韓国ＡＩ産業の地位を代弁するわけではない。しかし、イム代表が体験した苦境は韓国でソフトウェア（ＳＷ）を開発することがどんなことなのかを見せる尺度となることはできる。

イム代表はいくつかの中堅企業を転々としたＳＷプログラマーだ。だから韓国企業がＳＷ技術者をどのように接するか誰よりもよく知っている。「開発する人の意見は重要ではありません。こういうのが欲しいから作ってくれと言われます。帰宅して暇を見つけてトルバラムを開発したのも、『自分の仕事がしたい』という渇望のためでした。」

起業を支援する政府や民間団体も多い。イム代表はなぜ投資を受けることができなかったのだろうか。「投資を受けるためには、この技術を活用してどのようにおカネを稼ぐのかを立証しなければなりません。私はおカネを儲けるよりこの技術をさらに高い水準に引き上げることが目的です。開発者が私１人ということもいつも指摘されました。しかし、レベルの高い開発者を選ぶにはおカネが必要で、そのためには投資を受けなければならないのに、投資を受けるためには開発者が必要だと言います。」

投資誘致に何度か失敗した後、イム代表はこのまま「１人でやろう」と決心した。イム代表が開発に使うコンピュータは２５０万ウォン（約２４万円）の個人用だ。２２日に朴廷桓（パク・ジョンファン）９段に敗れたＤｅｅｐＺｅｎＧｏはハードウェアが３０００万ウォン水準だから「価性費（価格に対する性能）が高い」という評価を受けた。アルファ碁のハードウェア仕様は１００億ウォン台水準だ。

産業通商資源部の『技術水準調査報告書』を引用して「中国技術が目と鼻の先まで追いかけてきた」と報じた中央日報の記事には数百件のコメントが書き込まれた。コメントの種類は大きく２つに分かれた。「中国技術はすでに韓国を追い抜いている」という意見と「技術者を過小評価した結果」という分析だった。２カ月間、韓中産業競争力を取材して感じたことを明かすなら、ネットユーザーが産業部の報告書よりも正確に現実を診断しているということだ。

イム・ミジン／産業部記者