【中央時評】やめてくれ、もう十分だろう=韓国(1)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2016.09.12 14:45
人間の欲求と動機を説明する重要な原理の一つが恒常性(Homeostasis)の原理だ。常に維持したい平安な状態が存在し、その状態から抜け出した時はその平安な状態に戻ろうとする性向が生じるということだ。食欲・性欲・睡眠欲など生存に必須の動機がこのような恒常性の原理に基づくため、不足すればするほどさらに強い動機が誘発されるが、ある程度満たされれば動機が弱まったり消えたりする。もしかすると人間のすべての欲求がこのような恒常性の原理だけに基づくのなら、世の中はもっと平和になるかもしれない。必要な分だけ食べ、食べる分だけ育てて狩猟し、寒くないほど着て、定められた分だけ満たされ、それ以上は手に入れようとしなければ、理想的な君子の生活も可能でないだろうかと思う。
しかし人間の欲求と動機はそれほど簡単なものではない。よく言えば成就欲求だと見ることができるが、人間にはなかなか満足しない貪欲がある。新しいものやより良いのをもっと多く持とうとする欲求が存在する。すでに平安な状態に到達していても、すぐにそれに飽きるのが人間だ。こうした絶えない欲求は人間社会が成長する原動力だった。単に人間が他の動物に比べて認知能力が優れ、地球を支配しながら文明を享受しているのではなく、現在に満足しない貪欲があったため今の豊かさを享受することになったのだ。したがって人間を人間らしくする本質の一つが貪欲でもある。