過去を反省するオーストリア、過去への回帰を夢見る日本(2)
ⓒ韓国経済新聞/中央日報日本語版2014.06.24 15:03
すでに衰弱した状態だったオーストリア帝国がなぜ戦争をしたのかという点に対する分析も目を引く。オーストリア帝国は当時、大規模な戦争をする状況ではなかった。しかしロシアとの戦争の危険をかえりみずセルビアに宣戦布告をした。このように無謀な決定をした背景には、何よりも欧州の最強国となったドイツ帝国との同盟条約、特に戦争勃発時の自動介入条項(いわゆる「白紙小切手」)があった。実際、オーストリアの開戦に続いてドイツとロシアが参戦し、これはすぐに英国とフランスの参戦につながった。「拡大された戦争(war of escalation)」の典型的な形態だった。
これと関連し、安倍首相は現在の北東アジア情勢が第1次世界大戦直前の欧州と似ているとし、日本を当時の英国に、中国を当時のドイツに暗示的に例えた。しかし今日の日本の経済力やグローバル影響力が100年前の英国と比肩するとみる主張に同調する人はほとんどいないだろう。むしろ日本が100年前のオーストリア帝国のように日米同盟だけを信じて中国と偶発的事態または「拡大された戦争」状況に陥る可能性に対し懸念が提起されているのが実情だ。攻撃的な民族主義と国際情勢に対する恣意的な解釈は、北東アジアの平和を脅かす要素だ。
この報告書がさらに関心を集める理由は発刊された脈絡のためだ。どの国も自慢するものがあり神話もあるものだ。それだけに難しいのが過去の問題だ。ところが敗戦国だったオーストリアはどのようにしてこれほど冷静なほど客観的に、自分たちのつらい歴史を振り返ることができたのだろうか。答えはおそらく、オーストリアが過去の失敗を踏んで平和と繁栄を謳歌する欧州最高の富国になったというところに探せるだろう。