「漢字とは何か。文化か、それとも文字か」。「文化だ」。「文字であると同時に文化だ」。「疎通のための文字だ」。禅問答のような討論に参加した人たちはみんな真剣な表情をしている。 最近、中国CCTVニュースチャンネルの人気時事番組「小崔説事」の討論の雰囲気だ。
この日のテーマは漢字の繁体字を復活すべきかどうか。 ゲストとして招かれた中国漢字研究学院の蕭啓宏博士が尋ねる。 「では簡体字は文化か」。さまざまな回答が出てくる。 「文化だ」。「疎通のための符号にすぎない」。中華文化編集の王干氏が入ってくる。 「簡体字は表意文字元来の形状と意味を喪失し、道理を語る文字としての資格がない」。傍聴席にいた女子中学生が手をあげて反論する。 「今になって繁体字を復元すれば、私たちの世代は文盲になる。 これに対してどう責任を取るのか」。蕭啓宏博士がまたマイクを握った。 「学生がいま繁体字を学ばなければ、数年後には中国文化の根本を韓国に行って学ばなければならなくなる…」。1時間ほど続いた討論からは「識繁写簡」という結論が出た。 簡体字で疎通するものの、繁体字は必ず学ばなければならない、という意味だ。