ヒトクローン胚からの胚性幹細胞（ＥＳ細胞）作成に関する論文を捏造（ねつぞう）し、研究支援金をだまし取ったとして、詐欺や業務上横領などの罪に問われたソウル大の黄禹錫（ファン・ウソク、５８）元教授に対する判決公判を見守った科学界は、重苦しい雰囲気に包まれている。

今でも４年前の悪夢のような論文捏造事件を思い出すからだ。それとともに「科学界が今回の判決を省察のきっかけにすべきだ」という決意も新たにしている。しかし全般的にコメントを控えた。特に科学界では同事件に関連した人物の有罪・無罪よりは、黄禹錫元教授が有罪か無罪かにより関心を示した。

有罪判決が言い渡されたことに対しては「量刑に関係なく当然な結果」という反応だった。これは法理に先立ち、黄元教授のＥＳ細胞捏造事件が「韓国社会に大きな混乱を招いた」という認識によるものとみられる。同事件の主務省庁だった旧科学技術部に統合された教育科学技術部（教科部）は、洪南杓（ホン・ナムピョ）スポークスマンを通じ「司法府の判断を尊重する。今回の判決が科学者の研究倫理意識を高めるきっかけになるべき」と論評した。

教科部傘下にある基礎技術研究会の閔東必（ミン・ドンピル）理事長は「黄元教授事件は科学界に多くの教訓を残した。科学社会に科学でない要素が割り込めば国益にどれだけ損害を及ぼすかを痛感できた。だからと言って第２の黄禹錫事件が起きないほど科学界の風土が浄化されたかについては反省しなければいけない」という認識を示した。同氏のコメントは、科学界に依然、整備すべき制度が残っている意味ともとれる。

科学技術団体総連合会の金相善（キム・サンソン）事務総長も黄禹錫事件がここまで進んだことに対し「遺憾に思う」とコメントした。しかし「科学界が心機一転して研究倫理をより向上させ、研究費を執行する際の透明性も高めるきっかけにすべきだ」と強調した。同氏はバイオとＥＳ細胞の研究などが委縮されてはならないと付け加えた。

同事件で、捏造した写真の真偽判明に寄与したＰＯＳＴＥＣＨ（旧浦項工科大）生物学専門研究情報センター「ブリック（ＢＲＩＣ）」のインターネット上のディベートルームには、予想外に判決に対する書き込みがほとんど掲載されていない。科学界の大半の人々は黄禹錫事件の「科学的事実に対する判決」は、０６年初め、当時のソウル大・黄禹錫事態調査委員会が「論文捏造」と結論付けたことで終結したと考えている。すでに、黄元教授が論文を発表した米科学誌「サイエンス」も関連論文２編の掲載を撤回した。

匿名を求めた科学界の人物は「黄元教授に対する司法府の判決に先立ち、科学界ではすでに判決が下されたのも同然だった。科学者としての黄元教授の名声には、回復しにくい汚点が残された」という見解を示した。


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