「父親」になったホン・サンス監督の姿が見える…キム・ミニとともに受賞した映画『目のやり場がない』(2)
母親にとっても、サンヒは扱いの難しい娘だ。高い学費をかけて美術留学させたものの、お金にならない実験映画にのめり込んでいる。純粋で融通の利かない長女は思いどおりにならないが、それでも何かと気にかかる。自分に似て計算の早い次男(シン・ソクホ)とは違い、サンヒは、母親がかつて心を奪われながらも、結局は破局に終わった昔の恋愛を思い起こさせる存在なのかもしれない。
ラストを飾るサンヒの短編映画では、彼女が淡々と映し出した道端のタンポポに、次のような告白が重なる。「私は穏やかだ。私は静かだ。私はいつも何かを好きでいる」。こうした物事をじっと見つめる姿勢が、なかなか親しくなれそうにないため「あの人」と呼んでいた継父(ドキュメンタリー監督)と、サンヒが思いがけず心を通わせるきっかけになる。