２０１７年にＤＲＡＭメーカーの長鑫存儲設立に向け株式を投資し、２０２０年には電気自動車メーカーのニオに７０億元を投資した。合肥市の支援で危機から脱したニオは本社と工場の一部を合肥に移した。２年ぶりにニオが経営難を克服すると株価が急騰し、市政府は投資金の５．５倍を回収した。ＢＯＥとニオに投資した基金は２０１９年から２０２１年まで毎年５０億元の収益を上げた。

他の大都市が学校支援と住宅普及に努める時に合肥は有望企業に投資したのだ。合肥が「ベンチャー投資家地方政府」と呼ばれる理由だ。安徽省経信庁の羅文杉副庁長は「専門家チームが産業を綿密に研究し、合肥の基盤技術を点検した上で専門機関と協議し投資決定を下した」と明らかにした。１９９０年代に中国の労働力と外国資本を結合した深圳モデルが中国南部を世界の工場に変えたとすれば、合肥モデルは産業高度化を望む都市のベンチマーキング対象になっている。

◇科学技術大学基盤の中国版シリコンバレー

米スタンフォード大学を背景にシリコンバレーで世界的ＩＴ企業が誕生したように、合肥モデルの中心には中国科学技術大学がある。１９６６～７６年の文化大革命当時に学者を弾圧した雰囲気で北京にあった科学技術大学が１９７０年に合肥に移転してきた。

５０年ほど過ぎたいま、科学技術大学は先端技術のハブに変貌した。科学技術大学物理学研究所では世界で最も先を行く核融合エネルギー原子炉のひとつである実験用先端超伝導容器のトカマクをテストしている。遺伝子のハサミ「ＣＲＩＳＰＲ」を使った最初の人間実験も２０１５年に合肥の病院で行われた。

２０２０年に合肥はチェーンボスシステムを導入した。市政府が半導体、量子科学、電気自動車、生命工学など１２の先端産業別の企業チェーンを作り、各チェーンに大きなビジョンを描いて監督する政府官僚を配置した。虞愛華党書記が直接集積回路チェーンボスを務め、市場がディスプレーチェーンを引き受けた。

◇汎用ＡＩ革新発展行動開始

今年合肥は李強首相が政府業務報告で明らかにした「ＡＩプラスイニシアチブ」のパイロット都市として立ち上がった。１月に羅雲峰市長は業務報告で今年６％の成長を目標に提示し、「新型ネットワークインフラ改善を加速化し、ハイパーコンピューティングセンターを構築して、スパーク大型認知モデルの核心技術難関を支援する」と明らかにした。アイフライテックが入るスピーチバレーを、中国を代表するソフトウエアパークとして育成するという計画も紹介した。

韓国啓明（ケミョン）大学のナム・デヨプ教授は中国のＡＩプラス政策について「米国が主導するハードウエア封鎖網をＡＩソフトウエアを活用した産業高度化で突破するという戦略。先端産業を株式投資で誘致する合肥モデルは中国と競合産業が重なる韓国も積極的に検討する必要がある」と指摘した。

ベンチャー投資家に変身した中国地方政府…ＡＩに正照準した「合肥モデル」（１）