２６日（現地時間）、米国メリーランド州ボルティモア港湾を横切る橋脚に大型貨物船が衝突し、橋が崩落する惨事が発生した。メリーランド州は人命被害が大きいと見て非常事態を宣言した。

ＣＮＮやニューヨーク・タイムズ（ＮＹＴ）など現地メディアによると、この日午前１時２８分ごろフランシス・スコット・キー・ブリッジの橋脚にシンガポール船籍のコンテナ船「ダリ」が衝突した。橋梁は約２０秒後に崩壊して水の中に崩れ落ちた。この事故で数人と車両数台がパタプスコ川に落ちたと当局は推定している。現地メディアは事故当時橋の上で作業員２０人余りが仕事をしていたという目撃談を伝えた。救助隊員が川に落ちた２人を救助したほか、水中に転落した約７人を捜索している。

事故はボルティモア港を離れてスリランカに向かおうとしていた船が出港してから３０分後に発生したと現地メディアは伝えた。捜査当局は正確な事故原因を調査中だが、「テロの兆候はなかった」と明らかにした。メリーランド州交通局長のポール・ウィードフェルド氏は「救助作業後に調査が実施されると思うが、衝突前に船が航路を離脱したようだ」と説明した。ダリの船主は声明を通じて「船長を含めて船員は全員無事だ」と明らかにした。ＢＢＣは海運専門家を引用して事故原因がメインエンジン故障、操舵装置の故障、発電機の停電、航海士のミスなど４種類が考えられると伝えた。

当時衝突場面を捉えた映像を見ると、橋梁に接近したダリは突然全体の照明が消えた状態で約１分間かけて橋脚側に移動した。ダリは照明がついた後、黒い煙を上げながら進行方向を急いで変更しようとしたが、照明がついて約１分後に再び照明がすべて消えた。停電と推定される状況は再び約５０秒間続き、再び照明がついたときにはダリはすでに橋梁のすぐ近くまで近接しており、そのまま橋脚と衝突した。

消防当局はヘリコプターやボート、ダイバーなどを動員して行方不明者の捜索に乗り出した。しかし寒い天候に加えて該当の事故が暗い夜中の時間に発生したため捜索に困難を強いられている。ＣＮＮは「崩壊した橋の近くの水温は９度で、このような温度も命に関わる場合がある」と報じた。事故地点付近の高速道路は上り下り両車線が通行止めとなっており、出勤時間を迎えて数千人の通勤に影響が出るだろうと現地メディアは伝えた。

メリーランド州のウェス・ムーア知事は声明を通じて「人々を救出するために努力している勇敢な人々に謝意を表し、全員の安全のために祈っている」と話した。ホワイトハウスは「橋梁崩落を綿密にモニタリングしている。バイデン大統領も報告を受けた」とし「行方不明者の家族にお見舞いを伝える」と明らかにした。

フランシス・スコット・キー・ブリッジは州間高速道路６９５号線の一部で、全長２．６キロの４車線の橋だ。ボルティモアだけでなくワシントンとニューヨークを行き来する車両もこの橋を利用してきた。メリーランド州政府の報告書によると、昨年この橋を利用した車両は１２４０万台だった。橋の名前は米国国歌『星条旗（Ｔｈｅ　Ｓｔａｒ－Ｓｐａｎｇｌｅｄ　Ｂａｎｎｅｒ）』の歌詞を書いた詩人であり弁護士のフランシス・スコット・キーにちなんでつけられた。橋の建設費用は１億４１００万ドルで、現在の価値に換算すると７億３５００万ドル（約１１１４億円）にのぼるとＮＹＴは伝えた。

ダリは２０１５年韓国の現代重工業が建造した。現代重工業の公式サイトによると、２０１５年１月５日ダリの命名式が開かれた。当時の記録によると、現代重工業はギリシャの船社オーシャンバルクから１万ＴＥＵ級コンテナ船２隻を受注したがそのひとつがダリだ。スペインのシュルレアリスムの代表的な芸術家サルバドール・ダリの名前を冠したダリは全長３００メートル、全幅４８．２メートル、全深さ２４．８メートルという大きさで、２２ノットの速力で航行することができる。ダリは２０１６年ベルギー・アントワープ港に停泊する過程で石垣と衝突する事故を起こしたことがある。当時の事故は船長と航海士のミスという分析だった。