パレスチナ武装勢力ハマスに対するイスラエルの攻撃が全面戦争に向け突き進んでいく様相だ。イスラエルのネタニヤフ首相は「交渉はない」として中東全域での報復戦を予告した。

イスラエル国防軍はハマスの奇襲攻撃から４日目の１０日、ハマスが統治するガザ地区を封鎖し地上軍の投入を急いでいる。国防軍はこの日「ガザ地区境界に３５個大隊が配備され、今後の作戦に向けた基盤施設を構築している」と明らかにした。続けて「ガザ地区周辺のイスラエル人の退避が完了し、パレスチナ人はエジプトが統制する道を通じて離れよ」と警告した。

イスラエル政府は史上最大規模となる３０万人の予備軍を招集したのに続き、この日追加で６万人の動員令を出した。市民にはシェルターに３日間とどまるよう勧告した。

ネタニヤフ首相は９日夜のテレビ演説で「ハマスは（イスラム原理主義テロ組織の）イスラム国（ＩＳＩＳ）。われわれは現代世界がＩＳＩＳに勝ったようにハマスをはね除けるだろう」と話した。

この日米国メディアのアクシオスは複数の消息筋の話としてネタニヤフ首相が８日にバイデン米大統領との電話会談で「ハマスを処断するためガザ地区に地上軍を投じる」と話したと報道した。

◇イスラエルの空襲でハマス幹部２人死亡…ＣＮＮ「人質４人殺害」

ネタニヤフ首相はバイデン大統領に「いまは交渉できない。中東で弱みを見せることはできないため武力で対応するほかない」と理解を求めたという。バイデン大統領はこうした主張に対し地上軍を投じないよう説得しなかったとアクシオスは伝えた。

イスラエルはハマス指導部暗殺作戦にも突入した。イスラエル政府高官はタイムズに「西側がＩＳＩＳに対する時にしたようにハマスを狙いすべての方面で行動に出るだろう。作戦的にハマス指導部と戦闘員を除去することを意味する一方、同時に国際的・外交的影響もあるだろう」と話した。イスラエル軍はイスラエル南部の統制権を完全に取り戻し、武装浸透したハマス戦闘員約１５００人の遺体を発見したと１０日に発表した。

ハマスは人質殺害の脅迫で対抗している。ハマスの報道官は９日、「イスラエルが事前警告なくガザ地区にいる民間人を標的とするたびにイスラエル人の人質を１人ずつ射殺する」と威嚇した。また「戦いが終わるまでイスラエルと人質交渉はないだろう」と強調した。人質の一部がすでに殺害された可能性も提起された。ＣＮＮはハマスと関連したテレグラムの動画を独自に分析し、拉致された民間人のうち少なくとも４人が抑留中に殺害されたと報道した。ハマスは１５０人ほどを人質に取っているいると推定される。ウォール・ストリート・ジャーナルは「ネタニヤフと参謀は拉致された人数がとても多く、ハマスが一部の人質を処刑し一部は『人間の盾』に使うかもしれないと懸念している」と伝えた。米ホワイトハウスは「ハマスに人質に取られた米国市民がいるのかまだわからないが、そうした懸念が大きい」と明らかにした。

米国は欧州の主要国と共同戦線を再確認し状況管理に注力している。バイデン大統領はこの日、英国、フランス、ドイツ、イタリアの４カ国首脳とハマスの攻撃を「テロ行動」と規定し、「国と国民を蛮行から保護するためのイスラエルの努力を支持する」という内容の共同声明を発表した。

ホワイトハウス国家安全保障会議（ＮＳＣ）のカービー戦略広報調整官は電話会見で「米国の地上軍をイスラエルに配備する計画はない」としながら世界最大の原子力空母である「ジェラルド・フォード」など空母戦団の東部地中海前線陣地への配備を通じ米国の国家安保利益を保護しイスラエルを防衛すると明らかにした。

西側はパレスチナ支援を再検討し始めた。欧州委員会は総額６億９１００万ドル相当の開発援助計画全体を再検討することにした。援助がハマスに直接支援されてはいないが、今回の事態の余波を総合的に考慮して最終決定すると明らかにした。ドイツも当初の支援計画を原点から見直すことにし、オーストリアは財政支援を中断した。

イスラエルのガザ地区空襲は４日にわたり続いている。イスラエル軍は９日夜にハマスが使う建物と武器保管所であるイスラム寺院などガザ地区内２００カ所を超える施設をロケット弾などで破壊したと明らかにした。空襲によりガザ地区南部カーンユニスでハマス幹部２人が死亡した。１０日午前まででイスラエルで最小１０００人、ガザ地区では７７０人が死亡したと集計された。