◇「天日塩の産地価格２倍上がる…量の確保難しい」

忠清北道清州市（チュンチョンブクド・チョンジュシ）のある塩販売業者。国産天日塩と輸入塩を買ってきて清州地域の卸売業者とマートなどに納品している。普段は３０トンずつ天日塩を保管していた倉庫がこの日は空っぽだった。日本の原発汚染水放流前に塩を備蓄しようとする人が増え塩の在庫がすぐになくなったためだ。

塩田から塩を買い入れる価格は１カ月で２倍ほど上昇したという。この業者のチーム長は「大型トラック１台で天日塩２６トンを持ってくれば取引先１００カ所余りに２～３週ずつ納品が可能だったが、６月に入ってからは２６トンが１日ですべて売れる。マートなど小売店のほかにも塩販売業者に直接立ち寄って塩を買おうとする住民も目に見えて増えた」と話した。

チーム長は「７月は雨が多く降るという予報があり天日塩の生産が減ると予想される。産地の買い入れ価格は上昇し、すでに塩を買いたい人は買っていった状態で、需要が減少することで小売り販売価格は以前の水準に戻りそうだ」と心配した。

◇品薄続く…小売店では塩購入制限

日本が福島原発汚染水放流計画を明らかにしてから韓国全土に「塩大乱」が続いている。先週よりは塩購入の行列は弱まったが、小売店では依然として天日塩購入制限をする所が多い。忠清北道では現職の農協組合長が天日塩を知人に売り住民らから厳しい視線を浴びている。韓国農水産食品流通公社（ａＴ）が明らかにしたところによると、粗塩５キログラム基準で小売り価格は１９日現在１万３０９４ウォンで平年の７９４０ウォンより６４．９％上がった。１年前の１万１１８９ウォンと比較しても１７％高い。家庭でキムチを漬け込んだり食堂で多く使われる２０キログラム入り１袋で換算すれば平均価格は３万１７６０ウォンから５万２３７６ウォンに大きく上がった。インターネットでは２０キログラムが６万～７万ウォン台で取引されている。

◇消費者「汚染水放流すれば岩塩食べる」

町内の小売店や農水産物市場では天日塩がなかなか見つからない。この日訪れた大田市大徳区（テジョンシ・テドクク）の農水産物市場にある塩辛店では「粗塩ありません」という張り紙が掲げられていた。マート関係者は「２０キログラム入り天日塩５０～６０袋が先週２日間ですべて売れた。卸売業者に話しても天日塩を確保できないと言われた」と話した。

ある人は「先週マートに寄って天日塩１００キログラムを買った。汚染水放流後は岩塩から採取した輸入塩を買う計画」と話した。

◇天日塩知人に販売した農協組合長に厳しい視線

忠清北道堤川（チェチョン）では現職農協組合長が農協の保有する天日塩を知人に売って激しい抗議を受けている。堤川農民会鳳陽（ポンヤン）支部は１９日に記者会見を行い、鳳陽農協組合長が天日塩数十袋を知人に売った」と主張した。

鳳陽農協によると、この農協経済事業所は今月初めに２０キログラム入り天日塩３２００袋を保有していたが、塩の買い占めが始まり１６日には在庫が完全に底をついた。農民会側は「Ｂ組合長が堤川市内にある組合員でもない知人らに直接鳳陽農協にある塩を数十袋ずつ販売し組合員を欺瞞した」と主張した。

◇原発専門家「三重水素は塩に残らない」

イ・チュンシク鳳陽支部長は「Ｂ組合長は天日塩をはじめとする農業資材や農産物などは組合員と非組合員関係なく販売してきたので問題にならないと面談過程で釈明した」としながらも、「全国的に塩不足で堤川の住民も市内から７キロメートル離れた鳳陽農協まできて塩を大量に買って行った。組合長が買い占めを防ぐことはできなくても知人のために塩を売ったのは組合員を愚弄する行動」と話した。

原発専門家は、汚染水が放流されても韓国の天日塩への被害は懸念するほどの水準ではないとしている。韓国科学技術院（ＫＡＩＳＴ）原子力量子工学科のチョン・ヨンフン教授は、「三重水素は水だが、水が蒸発する際に一緒に蒸発する。三重水素は塩に残らない」とした。

チョン教授は続けて「（原発汚染水は）福島から数キロメートル離れれば薄められ、１リットルに１ベクレルの三重水素が出ている。漢江（ハンガン）の水をすくって測定すれば１リットルから１ベクレル出てくる。そのためソウル市民が尿検査をすればその程度の三重水素は出てくる」とした。

続けて「中国でも放流しているが（三重水素濃度が）福島汚染水の５０倍程度だ。韓国もやっている。それによる影響は事実なく、総量を確認すればわずかだ」と強調した。チョン教授は「福島汚染水が韓国の海域に到達するには少なくとも４年はかかる」と付け加えた。