世界最大規模の金融詐欺師「クリプトクイーン（暗号資産の女王）」、ルジャ・イグナトバ（４２）が米連邦捜査局（ＦＢＩ）の１０大指名手配者リストに載ったと、１日（現地時間）、ＣＮＮなどが報じた。イグナトバに騙された被害者は１７５カ国３００万人、被害金額は少なくとも４０億ドル（現レートで約５４０１億円）に及ぶ。ＦＢＩは情報提供の謝礼金として最大１０万ドルを掲げた。

イグナトバは暗号資産「ワンコイン」でネズミ講詐欺を主導した。２０１４年、ブルガリアに暗号資産業者「ワンコイン有限会社」を設立し、２年間投資家を募集した。新しい投資家を誘致すれば１０～１５％相当の手数料を直ちに支給するネズミ講の手法で投資家が幾何級数的に増えた。しかし、１コイン当たり３０ドルを超えたワンコインは、ブロックチェーンに基盤を置いていない偽のコインだった。ニューヨーク・マンハッタンのデミアン・ウィリアムズ検事長は「暗号資産の初期投資ブームを完璧に利用した」とし、「史上最大のネズミ講金融詐欺（ポンジ詐欺）」と述べた。

イグナトバは２０１７年１０月に捜査が始まった事実に気づき、現金を少なくとも５億ドル持ってブルガリアからギリシャ行きの航空機に乗った後、行方をくらました。米国検察はイグナトバをテレバンキング・証券詐欺など８つの疑惑で起訴した。ＦＢＩニューヨーク支局のマイケル・ドリスコール支局長は「イグナトバは精巧な偽の身分証で生活しながら整形手術で外見まで変えたものと推定される」とし、死亡した可能性もあると述べた。

◆履歴書にはオックスフォード・マッケンジー…派手な話術まで

イグナトバを助けた米国の弁護士マーク・スコットは、４億ドルのマネーロンダリング（資金洗浄）の疑いを認め、有罪判決を受けた。スコットはイグナトバから「５０歳まで無条件に５０００万ドル」、「５０対５０で分けよう」といった携帯メールを受け取り、犯行に加担したことが確認された。そうして稼いだお金でマサチューセッツ州の高級住宅とヨット、ポルシェ３台を買うなどぜいたくな生活を楽しんだという。イグナトバが消えた後、ワンコイン代表を務めたイグナトバの弟・コンスタンティン・イグナトバも２０１９年に空港で逮捕された後、詐欺、マネーロンダリングなどの疑惑を認めた。

イグナトバはブルガリアで生まれ、１０歳の時にドイツに移住したブルガリア系ドイツ人だ。履歴書にはオックスフォード大学法学学士とドイツのコンスタンツ大学法学博士号を取得し、世界的なコンサルティング会社マッケンジー＆カンパニーのコンサルタントとして勤務したと書かれている。２０１４年に暗号資産ワンコインを創設した後、各国で投資説明会を開催し、世界最大規模の金融詐欺行為を行った。華麗な話術を誇ったイグナトバは聴衆の歓声の中で立った舞台で「ワンコインはビットコインキラーになる」とし「初期投資家は５～１０倍の収益が発生するだろう」と主張した。

ＢＢＣが２０１９年にイグナトバの話を扱ったポッドキャスト『消えたクリプトクイーン』はダウンロード３５０万回を越えた。ブルガリアでも『詐欺の女王』というタイトルのドキュメンタリー映画を公開する予定だ。ＢＢＣは２日、「イグナトバは２３万ビットコインを保有していることが分かった」とし、「昨年１１月の１５０億ドルから現在５０億ドルに価値が落ちたものの、逃避生活を続けるには依然十分だ」と述べた。