どの投手も勝敗が決まった試合でマウンドに立つことを好まないだろうが、敗戦処理投手は１４４試合の長期レースをするプロ野球で必要な存在だ。どのチームもすべての試合に勝つことはできず、敗色が濃厚な場合は戦力の損失を最小化して負けてこそ、次の試合を期待できる。

敗戦処理投手はひどい言葉として聞こえるかもしれないが、投手個人も任務を黙々と遂行しながら実力を向上させれば、いつか勝利を守る必勝組や先発の夢を叶えることができる。

５年単任制の下、韓国の５年目の大統領はひょっとすると敗戦処理投手と似ているのかもしれない。支持率が落ち、与党は「大統領消し」に動き出す。政権再創出に負担となる人気がない大統領にいつ離党を要求するかも分からない。政権交代を目指す野党の攻撃は鋭い。特に、今回の４・７補欠選のように任期５年目の選挙で惨敗すれば、大統領は点差が開いた試合の敗戦処理投手という状況だ。

一時は先発投手として好調な時期もあったが、敗戦処理をしようとすれば肩は重くなる。観客は１人、２人と去っていくが、それでも頑張って投げなければいけない理由がある。所属チームの翌日の試合、その次の試合のためだ。歴史という鏡と向き合っている大統領にとって所属チームはもちろん大韓民国だ。

いま他国のワクチン接種を羨望の眼差しで眺めながらマスク一つで持ちこたえている国民に、ワクチンを一つでも多く導入しなければならず、急騰する家賃が心配で眠れない庶民のために不動産価格を安定させなければいけない。特に、世界で有名な打者が並ぶ外交・安全保障現場は５年目の大統領には厳しいが、それでも耐えなければいけない。

過去の大統領は５年目に海外訪問を増やした。外交部は任期４年間に訪問していない国を管理するよう勧める。国内政治への影響力が弱まった大統領はこの甘い儀典の誘惑に駆られた。しかし今年はこれも難しい。

新型コロナが猛威を振るうためでもあるが、現在の国際情勢はのんきに外遊する時ではないからだ。米中覇権競争の中で、もしかすると任期５年目の１年間が今後の大韓民国の１００年を決める可能性もある。歴代の５年目の大統領が過去に一度も経験したことがない激浪の国際情勢だ。

敗戦処理投手の第１課題は試合をできる限り早く終えることだ。大量失点して試合を長引かせることになれば、チームメートの体力は落ち、翌日の試合にマイナスの影響を及ぼす。５年目の大統領も無理に動いて失敗すれば、次の政権に負担を与えるしかない。

幸い、２月に文在寅（ムン・ジェイン）大統領は鄭義溶（チョン・ウィヨン）外交部長官に任命状を与え、印象的な要請をした。「与えられた時間内に顕著な成果を出そうと急いではないけない」と。２日に米国で開催された韓日米安保担当高官協議に出席した徐薫（ソ・フン）室長も「南北関係と非核化は政権を引き継いで解決すべき超党派的な問題だ。我々が率先し、そのような立場で南北関係と非核化交渉に臨む」と述べた。

多くの人が２００７年の退任を４カ月後に控えて南北首脳会談をした盧武鉉（ノ・ムヒョン）元大統領の事例を憂慮していたが、良い敗戦処理投手になる兆しが見える。力を抜いてこそ投手の球威は生き返る。

併殺打で試合時間を減らすことができれば最も良い。李明博（イ・ミョンバク）政権は５年目の２０１２年、北朝鮮の韓国哨戒艦「天安」爆沈事件に対する報復として取った５・２４措置を任期中に解除するため北朝鮮と水面下交渉を図った。北朝鮮が呼応せず失敗したが、自分が出した走者は自分が処理するということだった。

文在寅政権が併殺打を狙うなら、やはり韓日関係になるだろう。韓国と日本はともに事情が良くないが、次期政権の韓日関係と韓日米の協力のために「負けるが勝ち」という大乗的な決断をすることを望む。

良い敗戦処理投手がいるチームは優勝の確率が高い強いチームだ。政権再創出になろうと、政権交代になろうと、次の政権のために任期５年目を黙々と送る大統領を保有する国こそが強国だ。

今季のプロ野球で新しく旗揚げしたＳＳＧランダースを遡れば、１９８２年が元年の三美スーパースターズがある。当時スーパースターズには映画にも制作されて有名になったカム・サヨンという敗戦処理投手がいた。現役５年間の成績は１勝１５敗１セーブだったが、彼は自身の人生で最も印象に残る試合に唯一勝利をマークしたロッテ・ジャイアンツ戦ではなく、敗戦処理登板で８イニングを投げて引き分けで終えたＯＢベアーズ（現斗山ベアーズ）戦を選んだ。任期５年目の政府の引き分けを期待する。

チャ・セヒョン／国際外交安保エディター