冬がやってきて皆が萎縮して縮こまる。しかもコロナウイルスの拡大は心理的憂鬱感につながっている。地下鉄で１人の小さなせきの声が死を想像させるこの季節に唯一闊歩するのはウイルスだけだ。この１２カ月間、人間の生活を根本から揺さぶった王冠をかぶった形のウイルスを防ぐために専門家と防疫当局は絶体絶命の力を注いで防疫政策を実行した。そしてついにワクチン開発の便りが伝えられた。摂氏マイナス７０度の保管ケースに入ったワクチンは軍事作戦を彷彿させ、初めて英国で接種を始めた。そして「科学と人間独創性の勝利」を宣言するに至った。

だが、今までどこの国よりも防疫に成功したと自信を持ってきたＫ－防疫は苦難の冬を迎えている。万能解決者だと信じていたワクチンの到着を待つ間、再びコロナウイルスは野火のように広がっている。感染者が１０００人に到達して心理的マジノ線がまもなく崩壊するのではないか戦々恐々とし、遅々として進まないワクチン確保に怒り嘆く。だが、ワクチン接種がすなわちパンデミック終息を意味するバラ色の展望を意味するわけではない。

新しい春が来ればワクチン接種で人口の大部分に免疫力が形成されても薄氷板と同じ状況から抜け出す可能性は低いと専門家は主張する。より一層重要なのは社会的距離の確保（ソーシャル・ディスタンシング）という「行動」の根本的変化が必要だ。過去１年間、ウイルス拡散を阻止するために人々は多くのことを犠牲にして耐えたが、同時に「疲労感」と「自惚れ」という心の伏兵を大きくした。ワクチンも攻撃的テストと追跡技術もこの心の伏兵を越えることができないという事実があらわれている。

１１月２８日、感染者数が突然５００人を突破すると都市人の関心から抜けた冬鳥が集まる渡来地や家禽類農場でまた別のウイルスが荒れ狂い始めた。全羅北道井邑（チョルラブクド・チョンウプ）のカモ農場を始め、慶尚北道尚州（キョンサンブクド・サンジュ）の産卵鶏農場、京畿道驪州（キョンギ・ヨジュ）、忠清北道陰城（チュンチョンブクド・ウムソン）まで全国的に高病原性鳥インフルエンザが拡散している。１１月２１日に野生鳥類から鳥インフルエンザウイルスが検出されて１カ月内に養鶏農場に広まると予想されたが、そのペースが予想よりも非常に速い。発生地域では半径３キロメートル内の家禽類農場で大々的な予防的殺処分を実施し、関係者の移動を４８時間中断させる強力な移動制限が実施されている。

すでに予防的殺処分措置によって９３万匹以上の家禽類が地中に埋没した。２００６年初めて発生してから２～３年の周期で発生する鳥インフルエンザは家畜防疫当局には悩みの種だ。すでに鳥インフルエンザを予防できるワクチンが開発されたが、実際の現場では使用できず殺処分で対応している。このように前近代的で非人道的な殺処分に依存する理由は何だろうか。もちろん発生可能なウイルスに対する予測の困難があるが、異口同音にワクチン接種の家畜は汚染されたものと違うところがないという社会的偏見がワクチン接種を阻む理由だという。現在、唯一冬期のカモ飼育を中断する休止期制度が実質的な代案になっている。

過度に密集した条件で家禽類を飼育する集約的畜産が鳥インフルエンザのような感染病拡散の根本原因という事実が明らかになった。このような状況で家畜に対してはワクチン接種や社会的距離の確保（ソーシャル・ディスタンシング）を推奨しない理由は「商品性」と「経済性」という論理に基づくためだ。人間の感染病は「生命」に関連し、家畜の感染病は「経済性」に関連するという二重のものさしによって「生命」は「経済」という論理によって遮られる。

２１世紀に入って繰り返されるウイルス拡大による社会経済的被害は人間や家畜に関係なく破局的であることを経験した。だが、社会的距離の確保とワクチンに対する希望が人間には許されるが、家畜には許されない現実は、その被害が異なるウイルスの猛威で人間に返ってくることになるという最悪の可能性を無視した近視眼的な態度に起因する。もちろん予防的殺処分を一度に中断することはできない。ワクチン接種と殺処分を併行する新しい試みは常に困難はあるが、十分に価値ある防疫戦略になりえる。コロナ防疫で認められたＫ－防疫が全世界の畜産業でもＫ－畜産防疫として認められるはずだ。

キム・ギフン／ポステック（浦項工科大学）教授・人文社会学部