８日に世界で初めて新型コロナウイルスワクチンの接種を始めた英国では１日ぶりにファイザーのワクチンを接種した国民保健サービス（ＮＨＳ）の職員２人がアレルギー反応を起こしたことがわかった。急いで開発されたコロナワクチンが安全なのか議論が広がっている。

副作用ワクチンの安全性と関連し、豚インフルエンザの事例が有名だ。１９７６年１月に呼吸器疾患で死亡した兵士の体から新型インフルエンザウイルスが検出されると米国政府はワクチンを開発し同年１０月から接種を始めた。４８００万人がこのワクチンを打ち、このうち５５０人に四肢がまひするギラン・バレー症候群を見せた。死亡者は２５人だった。豚インフルよりワクチンの副作用で死んだ人が多い「不名誉な大失敗」（ニューヨークタイムズ）を体験した格好だ。

ワクチンの安全性議論は韓国でも再演された。１０月１６日にインフルエンザワクチンを打った青少年が死亡した事実が明らかになった後、全国で高齢層を中心に同様の事例が続出した。疾病管理庁は先月２８日に「ワクチン接種後数日以内に死亡した事例は１０８件と集計され、このうち１０７件はワクチンと死亡の間に因果性はない」と発表した。この日までにインフルエンザワクチンを接種した人は１３３７万人だ。

専門家らはワクチンの安全性に疑いを抱く必要はないという立場だ。カトリック大学生命工学科のナム・ジェファン教授は、「すべてのワクチンには副作用がある」としながらも、「ワクチンメーカーが公開した資料によると、筋肉痛と発熱など軽い症状が大部分であり、命をおびやかす深刻な副作用はなかった」と話した。

保健福祉部のイム・インテク保健産業政策局長は「通常８～１０年かかるワクチンを１年以内に開発したため安全性と有効性を確実に検証するのは難しいが、大きく失敗する可能性はないとみる」と話した。

匿名のある感染症専門家は「最大の失敗で知られる豚インフルの事例でも深刻な副作用は１０万人当たり１人、死亡者は２００万人当たり１人にすぎなかった。当時とは比較しにくいほどワクチン製造技術が発展しただけに新型コロナウイルスワクチンを忌避する理由はないだろう」と話した。ワールド・オーメーターによると、コロナ累積感染者は７０００万人を超え、このうち２．２％の１５８万人が死亡した。韓国は累積感染者４万人に５７２人が死亡し死亡率は１．４％水準だ。

集団免疫伝染病を防ごうとするなら最大限多くの人が免疫力を備えなければならない。通常は対象集団の６０～７０％が病原体に免疫を持てつば感染症の拡散は止まるとされている。集団免疫理論だ。新型コロナウイルスワクチン開発前までは強力な社会的距離確保（ソーシャルディスタンス）を通じてウイルスの感染拡大を最大限遅らせたり、多くの人がコロナを克服し自然に集団免疫を獲得するまで待つしかなかった。社会的距離確保でウイルス統制に失敗した米国と欧州でワクチン接種を急ぐ理由だ。

現在主要なワクチンは新しいメッセンジャーＲＮＡ（ｍＲＮＡ）によるファイザーとモデルナの方式と、伝統的な伝達体方式のアストラゼネカ方式がある。ファイザーとモデルナのワクチンはすでに接種が始まったほど進展が速いが、保管時にマイナス７０度の低温を維持しなければならない。費用も１人当たり４万～６万ウォンと高い方だ。相対的に安全性が検証された方式で製造するアストラゼネカのワクチンは冷蔵庫さえあれば６カ月まで保管でき、費用も１万ウォン前後と安い。ただ抗体生成率が相対的に低く、第３相試験の結果、問題から普及が遅れる恐れもある。

政府はワクチンを確保でき次第、高齢者と集団施設入居者、慢性疾患者など脆弱層と医療陣、警察・消防公務員・軍人など社会必須サービス人材３６００万人に優先接種する予定だ。専門家らの間では政府がワクチン接種をもう少し急ぐ必要があるという指摘が出る。

高麗（コリョ）大学予防医学科のアン・ヒョンシク教授は「目の前で第３波が広がっている状況であれこれ測りながらゴールデンタイムを逃しかねない。とにかく１日も早くワクチンを確保し接種することがカギ」と話した。嘉泉医大予防医学教室のチョン・ジェフン教授も「防疫措置を強化して１週間ほど過ぎれば感染者が減った第１～第２波とは違い、最近の第３波は１０日間毎日５００人以上の感染者が発生している。究極的にコロナ流行を終わらせる唯一の方法はワクチン」と話した。

ワクチン接種が始まればコロナが終息するだろうか。最小限来年までは社会的距離確保とマスク着用を維持しなければならないという専門家が多い。米国立アレルギー・感染症研究所（ＮＩＡＩＤ）のアンソニ－・ファウチ所長は「来年末ごろになってこそ以前と同水準の『正常な生活』に戻れるだろう」と話した。集団免疫を確保するために最小限７５～８０％の人にワクチンを接種するのに少なくとも６カ月以上かかると予想されるためだ。この期間中に社会的距離確保やマスクのような防疫対策をおろそかにすれば集団免疫を達成するのにかかる時間が長くなるほかない。

大韓予防医学会もキ・モラン新型コロナウイルス対策委員長（国立がんセンター大学院予防医学科教授）は「タミフルが出てきたからとインフルエンザが終息したと話したりしないように、ワクチンが出てきたとからとコロナウイルスを撲滅することはできない。ただ来年には６０～７０％が予防接種をした後に大きな恐れなく日常生活ができるという意味で十分に正常化を期待できるだろう」と話した。