スティーブン・ビーガン米国務副長官兼対北朝鮮政策特別代表の訪韓を控えて北朝鮮が数回にわたって会う意向がないと拒否したことを受け、ビーガン副長官が８日「今回の訪韓で北朝鮮が私と会う準備ができていないという報道を見た。実におかしい。なぜなら、われわれは北朝鮮に会うことを求めたことがないため」と反論した。

７日入国して２泊３日の訪韓日程を進めている彼はこの日午前、ソウル都染洞（トリョムドン）外交部庁舎で李度勲（イ・ドフン）韓半島（朝鮮半島）平和交渉本部長に会った後、略式記者会見で「今回の訪問はわれわれの近い友人と同盟国である韓国に会うためで、立派な協議を行った」としてこのように話した。

これに先立ち、４日崔善姫（チェ・ソンヒ）第１外務次官は「米国と向かい合って座る必要がない」と明らかにした。一部では北朝鮮が米国に交渉再開に向けた「新しい構図作り」に圧力をかけているという見方があったが、ビーガン副長官が決心したように正面対抗したわけだ。彼は北朝鮮の対米交渉を総括する崔善姫氏とともに最近回顧録で米朝対話を非難したジョン・ボルトン前米国家安保補佐官も狙ったものだ。「私は崔善姫第１外務次官やボルトン大使の指示を受けない」と述べた。

駐韓米大使館は午後、略式記者会見の内容を報道資料として出したが、資料にはビーガン副長官が彼らについて「二人とも可能なことについて創意的に思考するよりは従来の考え方に閉じ込められ、否定的で不可能なことだけに焦点を当てている」とも述べたと記されている。これは現場で話したものではなく報道資料でも削除するのが通常だが、大使館側は「報道資料の内容はいずれもビーガン副長官の発言で引用して報道することができる」と知らせてきた。直接話したわけではないが、必ず伝えるべきメッセージと米側が認識しているという意味に解釈する余地がある。

これは真の非核化には関心がなくサラミ戦術で利益だけを得ようとする北朝鮮外務省の対米ラインに対する不満表出とみられる。ある外交筋は「かつて北核交渉の経験がある北朝鮮外交たちの頭の中には古い交渉教本が刻印されており交渉が難しい」と説明した。

実際、ビーガン副長官は「交渉する権限のあるカウンターパート（交渉相手）を金正恩（キム・ジョンウン）委員長が任命すれば彼らはその瞬間私たちが準備ができているということを分かるだろう」とし、崔善姫氏でない新しいカウンターパートを希望するという意向までにじませた。これまでの実務交渉で北朝鮮代表団が「非核化に対しては交渉する権限がない」または「非核化問題は金委員長だけが決断できる」という態度で出たことを念頭に置いたわけだ。

直接紹介したかのようにビーガン副長官の今回の訪韓は米朝接触より韓米協議ににさらに焦点が当てられたとみられる。実際に、彼は午後ソウル内谷洞（ネゴクトン）国家情報院を訪問したが、朴智元（パク・ジウォン）国家情報院長候補者と面談した可能性が大きいとみられる。まだ国会人事聴聞会も開かれる前に候補者に会うのは異例的だ。文在寅（ムン・ジェイン）政府の新しい外交安保ラインの対北朝鮮政策に関する考えを直接聞くためだったとみられる。彼は９日、徐薫（ソ・フン）新任国家安保室長に面談する。

一方、ドナルド・トランプ米大統領は７日（現地時間）、第３回米朝首脳会談の可能性に言及した。彼は「グレイ・テレビジョン」とのインタビューで「彼ら（北朝鮮）が会いたがっていると理解し、もちろんそのようにするだろう」とし、「役に立つならそのようにする」と述べた。