【中央時評】１００年ぶりのパンデミックと世界経済危機
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2020.04.02 15:47
新型コロナウイルス感染症のパンデミックが１００年前のスペイン風邪のように世界中に大きな衝撃を与えている。スペイン風邪は第一次世界大戦が終わった１９１８年に世界を強打し、当時世界中で１８億の人口の２％を超える４０００万人以上の死につながった。被害が最もひどかったインドは総人口の５．２％に当たる１６００万人が死亡し、被害が少なかった米国でも人口の０．５％に当たる５５万人が死亡したものと推定される。当時、朝鮮総督府の資料には戊午の年に流感で朝鮮人１４万人が死亡したという記録が残っている。
スペイン風邪が経済に与えた影響を分析したハーバード大学のロバート・ベロ教授は、主要４３カ国の国内総生産（ＧＤＰ）が平均６％下落したと推定した。感染が収まってからは成長率は急速に回復したが、生産と所得は永久的に減少した。米国の州別資料を分析した他の研究によると、製造業の生産が平均１８％減少した。多くの人が死亡または罹患したため労働力が失われ、感染の恐怖で消費と生産が萎縮した。その当時も感染を防ぐための「ソーシャル・ディスタンシング（人との物理的距離を取ること）」と営業制限措置を取ったことで経済活動が打撃を受けた。
パンデミックが進行中の状況で世界経済に与える影響を予測することは容易ではない。今まで出た統計を見ると、経済状況が百年前のスペイン風邪のケースに相当似ている。中国の今年１、２月の産業生産と消費、投資はいずれも前年に比べて２桁減少した。世界的な金融会社ＪＰモルガンは中国のことしの１－３月期のＧＤＰが前四半期に比べ年率で４１％減少すると予想している。４－６月期は消費・投資が回復し、政府の景気回復措置に支えられ、非常に急速に成長するだろうが、ことしの経済成長率は昨年の６．５％よりもはるかに低い１．１％に留まるものと予想している。世界銀行はことしの中国経済は０．１％～２．３％の低成長と予測する。世界経済が貿易とグローバルバリューチェーンで密接につながっており、中国経済だけ急速に回復することは難しい。
米国経済の見通しも否定的だ。ゴールドマン・サックスは米国ＧＤＰが４－６月期に年率で３４％減少すると予測している。新型コロナウイルスへの感染を収束させ、経済活動が再開されれば、下半期には２桁の成長率で急速に回復する可能性があるが、ことしの経済成長率は－３．８％で深刻な不況が予想される。この場合、昨年の２．３％の成長率に比べると６％ポイント低下し、スペイン風邪の時と平均ＧＤＰの減少規模が似ている。パンデミックを１～２カ月以内に防げば、景気が早くＶ字回復し、衝撃の規模はこれより小さくなるだろう。しかし、新型コロナウイルス感染症が夏まで続いた場合、世界経済の成長エンジンである米国、中国をはじめとする全世界が２００８～２００９年のグローバル金融危機よりも深刻な不況を経験する可能性がある。当時、世界経済の平均成長率は２００７年の５．６％から２００８年３％、２００９年－０．１％に下落した。
世界各国は国境閉鎖、移動制限、自宅待機、休校、営業制限・禁止などの措置で感染拡大を防ぐために努力している。目に見えないウイルスとの戦いに勝たなければならないから、これらの措置による不便は甘受するしかない。しかし、国民が苦しむ経済的困難を最大限に軽減しつつ、感染拡大が止まったときに経済が急速に回復できるように準備しなければならない。
危機の中でも経済成長の原動力である人と企業を十分に保護する経済政策が重要だ。企業が雇用を維持できるように賃金を支援し、失業保険を拡充し、被害が深刻な企業、小商工人や自営業者が破産しないように融資を保証し、家賃、利子、税金を減免する財政・金融政策が基本だ。資金梗塞を解消し、金融危機を防ぐ中央銀行の金融政策も必須だ。困っている世帯への生計支援も必要だ。若年層の学業や技術習得が断絶しないように支援しなければならない。
米国は、連邦準備制度の無制限の国債買い入れと大規模な信用市場の支援と共にＧＤＰの１０％に当たる２兆ドル（約２１４兆円）の大規模な財政支援を開始した。韓国も果敢な財政・金融政策で危機に対応している。１００年ぶりのパンデミック危機を克服するにためには効果のある政策を適時に果敢に行わなければならない。財政危機なく調達可能な限りの財政余力を動員し、経済的回復力を補填しつつ、感染症が止まったときに景気浮揚効果が大きい事業に果敢に投資することができなければならない。世界が同時に財政拡大をすれば貿易が増え、経済がより迅速に回復できる。
１００年前に比べ死亡率が大幅に減少したように今回のパンデミックの経済的な打撃も最小限に抑えることができる。国ごとに最高の頭脳と経験を持つ専門家が最善の政策を立て、グローバル経済危機に対応しなければならない。苦しく厳しい戦いが間もなく終わり、世界と韓国経済が急速に原状回復することを期待する。
李鍾和（イ・ジョンファ）／高麗（コリョ）大学経済学科教授
スペイン風邪が経済に与えた影響を分析したハーバード大学のロバート・ベロ教授は、主要４３カ国の国内総生産（ＧＤＰ）が平均６％下落したと推定した。感染が収まってからは成長率は急速に回復したが、生産と所得は永久的に減少した。米国の州別資料を分析した他の研究によると、製造業の生産が平均１８％減少した。多くの人が死亡または罹患したため労働力が失われ、感染の恐怖で消費と生産が萎縮した。その当時も感染を防ぐための「ソーシャル・ディスタンシング（人との物理的距離を取ること）」と営業制限措置を取ったことで経済活動が打撃を受けた。
パンデミックが進行中の状況で世界経済に与える影響を予測することは容易ではない。今まで出た統計を見ると、経済状況が百年前のスペイン風邪のケースに相当似ている。中国の今年１、２月の産業生産と消費、投資はいずれも前年に比べて２桁減少した。世界的な金融会社ＪＰモルガンは中国のことしの１－３月期のＧＤＰが前四半期に比べ年率で４１％減少すると予想している。４－６月期は消費・投資が回復し、政府の景気回復措置に支えられ、非常に急速に成長するだろうが、ことしの経済成長率は昨年の６．５％よりもはるかに低い１．１％に留まるものと予想している。世界銀行はことしの中国経済は０．１％～２．３％の低成長と予測する。世界経済が貿易とグローバルバリューチェーンで密接につながっており、中国経済だけ急速に回復することは難しい。
米国経済の見通しも否定的だ。ゴールドマン・サックスは米国ＧＤＰが４－６月期に年率で３４％減少すると予測している。新型コロナウイルスへの感染を収束させ、経済活動が再開されれば、下半期には２桁の成長率で急速に回復する可能性があるが、ことしの経済成長率は－３．８％で深刻な不況が予想される。この場合、昨年の２．３％の成長率に比べると６％ポイント低下し、スペイン風邪の時と平均ＧＤＰの減少規模が似ている。パンデミックを１～２カ月以内に防げば、景気が早くＶ字回復し、衝撃の規模はこれより小さくなるだろう。しかし、新型コロナウイルス感染症が夏まで続いた場合、世界経済の成長エンジンである米国、中国をはじめとする全世界が２００８～２００９年のグローバル金融危機よりも深刻な不況を経験する可能性がある。当時、世界経済の平均成長率は２００７年の５．６％から２００８年３％、２００９年－０．１％に下落した。
世界各国は国境閉鎖、移動制限、自宅待機、休校、営業制限・禁止などの措置で感染拡大を防ぐために努力している。目に見えないウイルスとの戦いに勝たなければならないから、これらの措置による不便は甘受するしかない。しかし、国民が苦しむ経済的困難を最大限に軽減しつつ、感染拡大が止まったときに経済が急速に回復できるように準備しなければならない。
危機の中でも経済成長の原動力である人と企業を十分に保護する経済政策が重要だ。企業が雇用を維持できるように賃金を支援し、失業保険を拡充し、被害が深刻な企業、小商工人や自営業者が破産しないように融資を保証し、家賃、利子、税金を減免する財政・金融政策が基本だ。資金梗塞を解消し、金融危機を防ぐ中央銀行の金融政策も必須だ。困っている世帯への生計支援も必要だ。若年層の学業や技術習得が断絶しないように支援しなければならない。
米国は、連邦準備制度の無制限の国債買い入れと大規模な信用市場の支援と共にＧＤＰの１０％に当たる２兆ドル（約２１４兆円）の大規模な財政支援を開始した。韓国も果敢な財政・金融政策で危機に対応している。１００年ぶりのパンデミック危機を克服するにためには効果のある政策を適時に果敢に行わなければならない。財政危機なく調達可能な限りの財政余力を動員し、経済的回復力を補填しつつ、感染症が止まったときに景気浮揚効果が大きい事業に果敢に投資することができなければならない。世界が同時に財政拡大をすれば貿易が増え、経済がより迅速に回復できる。
１００年前に比べ死亡率が大幅に減少したように今回のパンデミックの経済的な打撃も最小限に抑えることができる。国ごとに最高の頭脳と経験を持つ専門家が最善の政策を立て、グローバル経済危機に対応しなければならない。苦しく厳しい戦いが間もなく終わり、世界と韓国経済が急速に原状回復することを期待する。
李鍾和（イ・ジョンファ）／高麗（コリョ）大学経済学科教授