【中央時評】文在寅大統領の「偉大な後退」(1)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2018.08.03 15:25
実際に事業をした経験がある。記者生活から離れ、新聞を印刷する工場の代表を3年間務めた。輪転機から印刷された新聞が長いベルトに乗ってあふれ出てくる映画のその場面が演出されるところだ。映画のロマンチックな風景とは違い、インターネットとデジタルに押されて斜陽の道を歩む業種だ。2014年初めの真冬に工場労働者と最初にあいさつを交わした時のことを忘れることができない。「雇用維持を約束してください」。彼らの切実な目と言葉を今でもはっきりと覚えている。機械を動かす230人のブルーカラーは自分に迫ってくるかもしれないリストラの恐怖に震えていた。「最善を尽くしてやってみます」。可能な答弁のすべてだった。守るのが難しい約束は危険だ。そのようにして体得したものがある。
まず、お金は人格だ。お金を稼いで雇用を保障する時だけ経営者は尊敬される。仕事をさらに取ってきて稼働率を高め、売上と利益を増やしてこそ、雇用を維持できる。それは大変なことであり、あきらめたいという気持ちによく駆られる。2つ目、人員削減の誘惑は幽霊のようにはいかいする。現状維持どころか存廃の岐路の前に立てば、賃金据え置きやコスト削減で持ちこたえるには限界がある。最悪の場合、収支を合わせるための最も確実な方法はリストラ、すなわち人員削減だ。3つ目、他人の生計を実験対象にしてはいけない。わずかな判断ミスが誰かの人生を崩壊させることもある。