済州道（チェジュド）に到着したイエメン難民５４９人がこれまで純血主義しか知らなかった韓国社会に投げかけた波紋は大きい。他人事だとばかり思っていた難民問題が韓国の問題として身近なものになった。２６日、元喜龍（ウォン・ヒリョン）済州知事は「文在寅（ムン・ジェイン）大統領に会って、済州に来たイエメン難民問題を国家次元の懸案として扱ってほしいと直接掛け合いたい」と明らかにした。

この日、済州道西帰浦市（ソギポシ）の済州国際コンベンションセンターで開幕した第１３回済フォーラムでも難民問題が重く扱われた。中央日報が準備した「道の上の人々：世界難民問題の今日と明日」というテーマの特別セッションでだ。国連難民高等弁務官事務所（ＵＮＨＣＲ）親善大使の俳優チョン・ウソン氏がキム・ピルギュＪＴＢＣアンカーとともに対談に登場した。チョン氏は２０１４年からＵＮＨＣＲ親善大使として活動している。

チョン氏は今月２０日には、世界難民の日を迎えて「今日＃難民と共にしてください。彼らに対する理解と連帯で彼らの希望になってください」というコメントを残して議論の中心に立った。チョン氏はこの日の行事で「毎年やってきたように、難民に対する関心を促してＵＮＨＣＲの公式立場コメントを掲載したが、これ（コメント）に済州のイエメン難民問題が取り上げられた」とし「今は賛成・反対の立場を考える前に、理解と観点の違いをまず説明しなければならないのかもしれない」と口火を切った。

チョン氏はネパール（２０１４年）、南スーダン（２０１５年）、レバノン（２０１６年）、イラク（２０１７年）に続いて昨年１２月にはロヒンギャ難民村（バングラデシュ・コックス・バザール）を訪れた。毎年５０００万ウォン（約４９２万円）の寄付も行っている。毎年継続してきた難民支援だが、済州のイエメン難民問題が大きな社会問題になってからは彼の活動に対する関心が大きくなり、評価も交錯している。

チョン氏は「キャンプを訪問しながら数えきれないほど多くの難民や失郷民（故郷を追われた人々）に会って『この巨大な世界的問題を我が国の人々にどう知らせなければならないだろうか、大きすぎる課題を自ら抱え込んでしまったのではないだろうか』と自問する時も多かった。しかし、遠い国の話ということでほとんど慣用的に受け入れて理解された」とし「ところがある瞬間、数多くの難民が済州道に申請を出したという理由で『なぜ我々がその人々の責任を負わなければならないのか』と考えるようになったようだ」と話した。現在、済州道に到着した５４９人のイエメン人のうち４８６人に対する難民審査が進められている。今月１日からは済州道にビザがないと入れない国にイエメンが追加（現在１２カ国）された。

このような政府の措置に対してチョン氏は「ノービザ入国不許可国にイエメンを追加したのは人権を考えれば有り得ないことだ」としながら「ビザを通じて難民の入国を制御するということは難民がどこの国に行っても支援を要請しにくい危険性をはらんでいる方法」と指摘した。チョン氏は引き続き「大衆にとって人権という単語はとても漠然として難しいものかもしれない。済州道民は、済州道がすべての責任を負わなければならないのかという問題に対する反感や不安があると思う」とし「出島を制限したため、まるで済州道が全責任を負わなければならないという意識ができてしまったようだ。出島を許可していたなら、イエメン人がソウルなどのコミュニティに参加して支援を受け、大変でも自ら衣食住の問題を解決しながら済州道や中央政府の負担を減らすことができたかもしれない」と話した。

韓国社会が難民問題に敏感に反応する根本的な社会現象に対する指摘もあった。チョン氏は「母親が子どもを育てるのが大変で、２０３０世代が社会からの剥奪感と就職に対する不満があり、女性はいつも犯罪にさらされている不安な心理があるが、５００人の難民が突然（それらのマイナス感情の）導火線になった。そのようなさまざまな社会問題に対して『私たちも大変なんだから』と話すようになったのだと思う」と説明した。チョン氏は引き続き「政府は国民の話を傾聴し、そのような不満を一緒に解決していって、国民は政府が（難民問題で）国際社会で堂々とした態度が取れるように落ち着いた気持ちで問題解決のための方法を賢明に探っていかなくてはならない」と主張した。チョン氏はまた「根拠がよく分からない情報や誇張された情報で議論の本質から離れてはいけない。大韓民国国民の人権よりも難民の人権のほうがもっと重要なのかと問い詰めるような感情的なアプローチもよくない」と付け加えた。


＜済州フォーラム＞俳優チョン・ウソン「他民族を排斥して子どもに世の中を愛せと言えるか」（２）