◇韓米両国に対する警告

中国が韓半島問題の当事者の身分を主張した２番目の理由は「チャイナパッシング」議論を引き起こした両国、すなわち韓国と米国に対し警告メッセージを送るためと考えられる。事実「チャイナパッシング」はその実体の有無とは関係なく中国の自尊心を大きく損ねたことは明らかだ。中国は北朝鮮の核問題解決過程で韓国が中国と十分に相談しなかったとして内心物足りなく考えている。韓国が中国を差し置いて北朝鮮とだけ、そして米国とだけ疎通するとみているのだ。

例えば金委員長が今年初めに南北関係改善の意志を表明した新年辞を発表するとすぐに韓国がこれを中国と一言半句の意見交換もなく受け入れ、また中国・昆明で韓国が北朝鮮と秘密裏に接触し平昌（ピョンチャン）冬季五輪参加問題を議論したことなどに対し中国は寂しく考えていたという。中国は韓国が北朝鮮と行っていること、そして米国との間で行き交う対話において中国と十分に共有していないと疑っている。

特に中国が不快になったのは韓国が中国を排除した終戦宣言問題を取り出したことだ。また、韓国政府に助言しているとされる一部学者が公開セミナーなどで中国が非核化議論に「便乗しようとしている」と話し中国に対して警戒する姿を見せたことも中国の気持ちを刺激した。

そのためか中国政府の意中を代弁するといわれる中国環球時報が社説で中国を排除した南北米３カ国による終戦宣言が議論されているとして、これを「特に笑わせるもの」とこき下ろしたりもした。

中国外交部の華春瑩報道官もやはり南北米の３カ国だけが参加する終戦宣言の可能性に対する質問を受け「中国は韓半島問題の重要な当事国であり休戦協定署名国として当然すべきことを継続するだろう」と答えた。朝鮮戦争休戦協定の当事者である中国をどうして排除できるのかという反論だ。

事実振り返れば中国に韓半島問題での「チャイナパッシング」への不安感を刺激した出発点はトランプ大統領の米朝首脳会談開催宣言だった。トランプ大統領は「北朝鮮問題は中国が解かなければならない問題」と話していた。まるですべての道はローマに通じるかのように北朝鮮の核問題は中国を通じて解決すべきとして「中国責任論」を主張した。ところがいまでは「これ以上中国は必要なく、米国が北朝鮮と直接取引する」というシグナルを送った格好になった。

これに対する中国の対応は習近平主席が３回金正恩委員長と会談することで明らかになった。問題は韓米の立場では突然の中朝首脳会談が「割り込み」に映るということだ。南北首脳の板門店（パンムンジョム）会合に先立ち初めての中朝首脳会談が電撃的に行われ、２度目と３度目の首脳会談は米国を狙ったのが明らかだったためだ。特に大連での中朝２次会談以降トランプ大統領は北朝鮮の態度が強硬になったとし、そう 変化の動因として「中国背後説」を指摘したりもした。

◇非核化より影響力狙う

中国が北朝鮮との首脳会談を進めたということは、北朝鮮の核問題が韓米の主導のため現状が変更される可能性が大きくなり「北朝鮮に対する非核化」と「韓半島での影響力確保」のうち後者側に戦略のバランスの重心を移したものと分析される。こうした戦術的ミクロ調整が戦略的マクロ調整に変わる可能性もあるという点に問題の深刻性がある。中国がこれからは米国との関係を意識して北朝鮮との関係を犠牲にしようとはしないだろうからだ。

韓国政府としては複雑な北朝鮮の核交渉の変数を最大限減らそうとする次元で中国がしばらく一歩退いた地点でバランスを取っていてくれればと望んでいたかもしれない。だがタイミングが問題になる。あえてこのタイミングで終戦宣言問題を先制的にテーブルの上に載せ中国を刺激する必要があったかということだ。

中国は北朝鮮の核問題で自身が疎外されると考えればむしろわざとひねくれて自身の存在感を示そうとするかもしれない。ややもすると韓米主導の北朝鮮非核化の努力を妨害する存在になりかねない。南北首脳会談翌日に中国の軍用機が韓国の防空識別区域（ＫＡＤＩＺ）を侵犯したのは中国の不満を示唆するもので決して軽くみるべきことではない。「チャイナパッシング」には北朝鮮の核問題の円満な解決を期待しにくい。好むと好まざるにかかわらず中国の存在と役割を認める立場で非核化ロードマップを描いていくべきだろう。


＜チャイナインサイト＞中国はなぜ韓半島問題の「当事国」を自任するようになったのか（１）