「羽生！宇野！」

観衆席には日の丸が揺れ、リンクにはくまのプーさんの人形“降った”江陵（カンヌン）アイスアリーナはまるで日本国内大会のような様相だった。圧倒的な点数で金メダルを首にかけて６６年ぶりの冬季オリンピック（五輪）男子シングル２連覇を成し遂げた羽生結弦（２４）と銀メダリストの宇野昌磨（２１）が日の丸を掲げてリンクを旋回すると、観覧席を埋めた日本人の観衆は悲鳴に近い歓呼を上げて記者の耳は遠くなるほどだった。

フィギュアスケート競技が開かれた江陵アイスアリーナは今大会の競技場で日本人の観衆の比率が最も高い場所だ。多くの観衆が日本の「フィギュア王子」羽生を見に来た「スケオタ」（「スケートオタク」の略語）で、４０～５０代の女性観衆が圧倒的だ。途切れることのない日の丸ウエーブに羽生を応援する横断幕、羽生の好きなくまのプーさんのマントまで、江陵アイスアリーナはどこも羽生一色だった。同様に宇野も自国観衆の熱い応援の中で演技を見せて２位という成績を収めた。

四方から聞こえてくる日本語、どこへ行っても目にする羽生の応援幕まで、「ここは日本か？」と思うほどの雰囲気だった。少なくとも男子シングル公式訓練と競技が開かれた１５～１７日の３日間は、羽生ファンが江陵アイスアリーナを占領したといっても過言ではなかった。ファンは羽生がリンクに姿を現すたびに場内が割れるような叫び声を上げ、羽生の名前を声が枯れんばかりに叫んだ。羽生の演技が終わると、約束でもしたかのように数百個のくまのプーさんの人形がリンクに降り注いだ。ある外信記者は「４年に一度、『なぜ羽生の競技が終わると、くまのプーさんの人形があふれるのか』に対する記事を書かなくてはならなくなる」と言って笑った。

熱烈な「スケオタ」たちは欧州や北米で開かれる競技まで追いかけていくことでも有名だが、今回の平昌（ピョンチャン）に唯一多くのファンが集まったのは地理的にも近いためだ。数多くのファンが羽生を応援するために飛行機チケットを予約し、昨年開かれた四大陸選手権大会の時から「羽生特需」を予感させていたファンは「羽生観光商品」を作り出して多くのファンが江陵に行けるようにした。そのおかげか、羽生は日本国内にいるかのような雰囲気の中でリラックスして演技ができ、２位に宇野もホームアドバンテージ同様の効果を得ることができた。

取材の熱気も尋常ではなかった。競技場に併設されているベニューメディアセンター（ＶＭＣ）は三分の二以上が日本取材陣で埋まった。羽生の五輪２連覇を取材しようと韓国を訪れた日本の取材陣は、フィギュア担当だけで軽く５０人以上、フリーランサーや放送局関係者たちまで加えるとゆうに数百人に達する。共同取材区域（ミックスゾーン）はいつも日本の記者で大混雑だ。

この様子を見守りながら、ふと４年後２０２２北京冬季五輪の風景が気になった。江陵を覆い尽くした日本の「スケオタ」が４年後の北京でも同じような風景を演出するのではないかと思ったからだ。北京も日本から非常に近いので、大々的な応援団の訪問で日本が再び「ホームアドバンテージ」を享受する可能性は充分ある。

もちろん、いま江陵を訪れている「スケオタ」は羽生というスターを追って動く人がほとんどだ。４年後の北京が江陵のように日の丸で覆われるかどうかは羽生の出場如何にかかっていていると言っても過言ではない。変数はまだある。いくら熱烈な日本の「スケオタ」でも、人口１４億人を誇る中国を「数字」で勝つことができるとは言えない。