米国の野球ファンにとって韓国ロッテ・ジャイアンツ－日本ハム・ファイターズの練習試合はそれほど興味深い対決ではないはずだ。１０日（現地時間）に米アリゾナ州ピオリアのスポーツコンプレックスでは約１００人の米国ファンがのんびりとアジア野球を見物していた。

この試合は入場券を買って見に来たファンより関係者の数が多かったようだ。韓国と日本の取材陣が約５０人、この試合を日本に中継するスタッフが１０人ほどだった。またメジャーリーグ（ＭＬＢ）のスカウトが５０人ほどいた。日本人記者は「メジャー３０球団がすべてスカウト１、２人ずつを送ったようだ」と話した。

また、柳賢振（リュ・ヒョンジン、２９、ＬＡドジャース）もグレンデールで自主トレを終え、この球場を訪れた。ホ・クヨンＭＬＢ解説委員と廉京ヨプ（ヨム・ギョンヨプ）ネクセン監督も柳賢振と一緒に観客席に座った。この日の主人公、大谷翔平（２２、日本ハム）が生み出した異色の風景だ。

大谷は昨年１１月に開催された「プレミア１２」で韓国打線を完ぺきに抑え、国際舞台に登場した。１６０キロ以上の剛速球をロケットのように発射し、フォークボールなど変化球も矢のように正確に落とす怪物投手だ。遠からずＭＬＢに進出する可能性が高いため、メジャー全体が大谷に大きな関心を向けている。

この日のロッテ戦は大谷の今季初の実戦登板であり、取材とスカウトの熱気は相当なものだった。大谷は１回、黄載鈞（ファン・ジェギュン）に安打を許しただけで、２イニングを４奪三振、無失点に抑えた。この日の直球の最高球速は９７マイル（１５６キロ）だった。ロッテは主力選手でラインナップを構成したが、大谷の速球と鋭い変化球に対応できなかった。０－１とリードされたロッテは９回裏、黄載鈞の三塁打とソン・ヨンソクのタイムリーで試合を引き分けにした。

大谷のピッチングを見た廉京ヨプ監督は「２０歳を過ぎたばかりの年齢であのような投手がどこにいるだろうか。世界ランキング１位投手」と評価した。ロッテの趙原佑（チョ・ウォンウ）監督も「何も話す必要がない投手。直球のスピード、制球力、変化球駆使能力すべてが最高だ」と評価した。

ＭＬＢのスカウトも大谷のピッチングを勉強するように見守った。大谷が降板した後、米国のスカウトが球場を去っていくたびに日本の記者は観戦の所感を尋ねた。

大谷が米国でも症候群を起こす理由は優れた商品性にある。すでにＭＬＢ級の実力を備えた大谷はハンサムで長身（１９３センチ）だ。メジャーに進出すれば縁故地の日本市場を引き込む可能性が高い。スポニチの記者は「田中将大（２８、ニューヨーク・ヤンキース）やダルビッシュ有（３０、テキサス・レンジャーズ）より大谷に対する日本人の期待は大きいようだ」と伝えた。

すべての野球選手がそうであるように大谷にもＭＬＢは夢の舞台だ。２０１２年の高校卒業を控え、大谷は日本の球団に「自分を指名しないでほしい。私はメジャーに行く」と語った。日本でプレーする考えがない自分を指名することで指名権を無駄にしてほしくないということだった。

しかし日本ハム球団は誠心誠意で大谷を説得した。大谷の希望通りに打者でも出場することを認め、日本プロ野球を経験してからＭＬＢに行くのが成功の確率を高める選択だと口説いた。さらに４年後にはＭＬＢ進出を認めるという密約もあったと伝えられる。大谷は早ければ今季後、遅くとも２、３年以内に米国市場に出てくるため、大谷に対する関心はさらに高まるはずだ。

日本球団は沖縄や宮崎など自国でスプリングキャンプをする。しかしサンディエゴ・パドレスが日本ハムに野球場を無償貸与すると、日本ハムのキャンプ地が変わった。このため昨年この球場を使用した斗山ベアーズは豪シドニーでキャンプ地を移さなければならなかった。サンディエゴが日本ハムの歓心を買うために努力したのだ。大谷に対するポスティング（非公開入札）に備えた布石だ。

周囲は盛り上がっていたが、大谷は落ち着いて試合を準備して投球した。１回表、打者オ・スンテクを平凡なセンターフライに打ち取った大谷は中堅手の陽岱鋼に感謝の表示をした。ＭＬＢのスカウトはこの点も興味深く見た。廉監督は「野球の実力が高く、謙虚さも兼ね備えた選手。誰からも好まれるしかないだろう」と話した。