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【取材日記】粗末な防疫が招いたMERS恐怖=韓国

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2015.05.28 15:38
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会社員のパク氏(36)は最近、アラブ首長国連邦(UAE)に出張に行ってきた。パク氏が出入国する際に経た検疫手続きは、仁川(インチョン)国際空港の入国ゲートを出て熱感知カメラを通過しただけだ。出国前に中東でラクダとの接触を避けろというような注意事項を聞くことはなかった。入国する際も数日以内に熱やせきが出たら直ちに保健所に行って診療を受け、中東に行ってきたと伝えるようにとの要請はなかった。帰国後、中東呼吸器症候群(MERS、マーズ)発症のニュースに接したパク氏は「政府が深刻な感染病が出回っている地域に行く国民に、ひと言でも注意してあげるべきじゃないのか」と言ってあきれた。

国内初のMERS患者A氏(68)もパク氏と同じだった。それで中東に行ってきた後、熱やせきも出だが風邪程度と考えた。近くの病院で診療を受け、それでも治らないために大きな病院に移った。病院4カ所を転々とした後に自分がMERSという病気にかかったことを知った。

 
国内でMERS患者は5人に増えた。最初の患者が確認されてから1週間で追加の感染者が4人増えたのだ。感染者と接触したという理由で家に閉じこもることになった隔離対象者も63人に上る。アジアでMERSの2次感染者が出てきた国は韓国が唯一だ。MERSは致死率は高いが伝染力は強くない。それでも病気が広がったのは、政府の粗末な検疫のせいであるところが大きい。27日、国会保健福祉委員会の懸案報告の席では保健福祉部・疾病管理本部に向かって「いつでも流入の可能性があったのに政府が遠い国のことだと考えて消極的に対処して2次感染者を量産した」(イ・ジョンジンセヌリ党議員)らの叱責があふれた。

患者発生前に政府が設定したMERS危機の警報水準は「関心」段階だった。関心段階でも従わなければならない防疫指針がある。中東地域を出入りする国民に感染予防のための注意を与えなければならない。全国の病院・医院には発熱・せきの症状がある患者が来たら中東訪問の履歴を必ず尋ねるようにしなければならない。だが、この間守られていなかった。

もしA氏が出国前に帰国後の健康異常時の行動要領について聞いていたら状況は変わる可能性があった。自身の健康のためにも直ちに病院や保健所に駆けつけて自身の旅行経路を説明した可能性が高い。

昨年、中東地域から飛行機で国内に入ってきた人は50万人に達する。「感染者の入国自体を防ぐことはできない」という疾病管理本部の抗弁はふさわしい言葉だ。だが最低限2次感染は減らすことができる。新型肺炎・鳥インフルエンザなど国境を行き来する感染病は着実に発生している。正しくしっかりとした防疫システムの構築は、もはや国家の必須課題だ。

イ・エステル社会部門記者

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    イラスト=キム・フェリョン
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