戦略指導者は、この地域で最も緊急な危機が何であると認識しているだろうか。１位に挙げられたのは地域レベルの経済・金融危機だった。領土と歴史をめぐる紛争が２位、気候変化が３位だった。

地域経済統合に関して回答者は一般的に、統合の深化、既存機構、環太平洋経済連携協定（ＴＰＰ）などの構想について支持を表明した。最も重要な機構として指定されたのはアジア太平洋経済協力会議（ＡＰＥＣ）と主要２０カ国（Ｇ２０）だった。「大変重要だ」と「ある程度重要だ」という回答が８２％に達した。その次ぎは東南アジア国家連合（ＡＳＥＡＮ、８１％）と環太平洋経済連携協定（ＴＰＰ、７５％）だった。

今回の調査で最も驚くべき点は、政治的価値の重要性に対する米国側の専門家の立場の変化だった。２００９年の米戦略国際問題研究所（ＣＳＩＳ）の調査結果と比べると大きく変わった。民主主義の価値が地域共同体の建設にとって重要なのかについて、当時の米国の専門家たちが最も大きく「共感する」という国家グループに属していた。一方、中国の専門家たちが最も懐疑的だった。今回の調査では、米国の専門家たちが民主主義の重要性を最も低く評価した。人権や女性の地位向上についても米国人専門家たちが底辺を占めた。中国人専門家たちよりも低かった。国内の政治制度の強化と自由で公正な選挙の重要性を問う項目では、米国の専門家たちが下から２番目だった。

韓国の戦略分野の指導者は、どのように答えたのだろうか。彼らは韓米同盟を強力に支持し、地域統合に全面的に賛成した。１０年後にも米国がアジアで最も力がある国だろうと答えた韓国の専門家は６１％だった。１１カ国の回答者の平均は４８％だった。韓国人専門家の８％だけが米国の「アジア重視政策」を支持せず、驚くことに、中国が１０年以内にアジアで最も強力な国に浮上すると展望したのはわずか３％だった。ＴＰＰに対しては８３％が「大変重要だ」あるいは「ある程度重要だ」と答えた。一方、中国が主導する東アジア包括的経済連携（ＲＣＥＰ）については支持率の低さが顕著だった。

韓国の戦略エリートのうち４９％が東アジア地域の統合を強力に支持した。だが韓国人回答者は、これまで成した地域統合について最も悲観的だった。失望の原因は色々なものがあるだろうが、最も大きな要因は歴史対立だと見られる。韓国は米国の同盟国の中で今後、中国の台頭よりも歴史・領土対立がさらに憂慮されると答えた唯一の国だ。だが韓国の専門家たちは中国の影響についても否定的だった。４７％の回答者が、中国の影響は「ある程度否定的だ」と答えたのだ。

最後に、北朝鮮問題については韓国と日本の専門家たちの意見がまとまっていた。両国の専門家たちはいずれも北朝鮮政権の崩壊と核拡散について深刻に憂慮していた。

ビクター・チャ　ジョージタウン大教授／マイケル・グリーン米戦略国際問題研究所（ＣＳＩＳ）上級副所長


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