【コラム】報告書燃やしてこそ、セウォル号乗り越えられる(1)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2014.05.14 15:49
反戦小説の白眉に選ばれる『西部戦線異常なし』は、ドイツの作家レマルクの第1次大戦参戦の体験を土台にした作品だ。主人公パウル・ボイメルは、祖国愛を前面に出した先生の勧めで学校の友人らと共に参戦した。レマルクのように主人公も18歳ほどの少年兵だった。友人は恐怖と苦痛の中で順に死んでいった。最後に主人公が戦死した日の司令部の戦況報告書には「西部戦線異常なし、報告する事項なし」と記されていた。小説は無力な個人が耐える実存的な苦痛の重さが、組織によって簡単に無視される非情だということを描き出している。
2014年5月の大韓民国は、地獄の嘆きが支配している。セウォル号は無理な改造に過剰積載へ傾倒した状態で、西海(ソヘ、黄海)を漂う危険な構造物だった。「海上の時限爆弾」で働いていた機関士は、恐怖で真っ青になりぞろぞろと会社を離れた。セウォル号を運営する清海鎮(チョンヘジン)海運の職員は「国民直訴の鐘」(国民が行政に嘆願できるポータルシステム)に会社の問題点を告発して真実を明らかにしてほしいといった。だが、この政府のただの1人も関心を見せなかった。