私たちにとって深刻な問題は、オバマ大統領の優柔不断な態度で米国の信頼が大きく揺れることだ。阻止ラインを設定しておいたオバマ大統領は、シリアが阻止ラインを越えたにもかかわらず、国内外の世論を眺めながら効果的な報復時期を逃した。戦後の世界秩序、特にアジアと欧州の安定は、米国の防衛公約に対する同盟国の信頼を基礎に維持されてきた。その信頼がシリアで揺れている。韓国のように安保を米国の公約に頼る国には深刻な事態だ。

韓半島に及ぼす影響は直接的だ。北朝鮮の化学兵器保有量はシリアの２．５倍にのぼる。北朝鮮はシリアとともに、１９９２年に締結された国連化学兵器禁止条約（ＣＷＣ）に署名しなかった４カ国の一つだ。核弾頭とは違い、化学兵器は野砲やロケットおよび航空機でも運搬される。北朝鮮はシリアにミサイルと化学兵器生産装備を支援してきた国だ。金正恩（キム・ジョンウン）第１書記はシリアで決断をためらうオバマ大統領を見て、会心の笑みを浮かべるだろう。

ケリー米国務長官は「私たちが沈黙すれば、北朝鮮とイランの核兵器開発を防ぐ名分が弱まる」と警告した。ヘーゲル国防長官も「米軍２万８０００人が駐留している韓半島で、北朝鮮が韓国の安保を脅かしている」と述べた。ケリー長官とヘーゲル長官の警告が世論と議会の説得に向けた戦術的誇張だと考える人は、９５年にオウム真理教の狂信徒が東京の地下鉄車両にまいたわずかな量のサリンガスであっという間に１３人が死亡、６０００人が負傷した事件を考えるべきだ。

化学兵器を使用する国と団体を制裁するのは政治・軍事的な問題だけでなく、道徳的な問題であり価値の問題だ。米国が国連の決議を待ち、世論の支持と議会の承認を受ける国際法的・政治的手続きにつまずき、目の前で繰り広げられる反倫理的な犯罪行為を傍観したり攻撃の時期を逃せば、それは第２、第３のアサドにとって鼓舞的なものになるだろう。米国の信頼がかかるシリア事態は、私たちにとって決して対岸の火ではない。シリアは私たちの問題だ。

金永熙（キム・ヨンヒ）国際問題論説委員


【コラム】シリアは私たちの問題だ＝韓国（１）