「私まで出る必要はない。献身すれば使い古しになる。成功は１％の才能と９９％のお金とバックグラウンド…」。

２００９年１０月に誰かがインターネットに載せて人気を呼んだ「社会に出れば誰もが知る事実４３種類」の一部だ。 何とも言えない気持ちになる。 就職が厳しく‘８８万ウォン世代’の自暴自棄が感じられ、命令服従の位階を重視する窮屈な職場で働く若い会社員の心情がにじみ出ている。 若者の冷笑と絶望がさらに大きくならないよう、成功した最高経営者（ＣＥＯ）が若者と直接疎通する「社会貢献」に乗り出そうという主張のコラムを書いたりもした。 「同伴成長」だけが社会貢献ではないからだ。

１８日に大田（テジョン）で開かれた「第５回国際革新クラスターコンファレンス」で、『創業国家』の著者ソル・シンガー（Ｓａｕｌ　Ｓｉｎｇｅｒ）氏の話を聞きながら当時のことを思い出した。 シンガー氏はベンチャー創業が活発なイスラエルの成功秘訣に「フツパー（ｃｈｕｔｚｐａｈ）」を取り上げた。 「フツパー」にはずうずうしさ、分不相応、恥じ知らず、傲慢、驚く勇気など、いろんな意味が込められている。 シンガー氏は一言で「フツパーは権威に対する挑戦」と述べた。 シンガー氏に関する記事が出た後、共感を表す電話を何度か受けた。 ユ・ホヨン牧師は「フツパーは‘革新的突飛’‘創造的唐突’を意味する」という専門的な解釈まで聞かせてくれた。

世界で初めてノートブックで有・無線インターネットに同時に対応するインテルのセントリーノチップを開発したのは、インテルのイスラエル研究チームだった。 このチームはインテル本社と数カ月間にわたり激しく争った。 本社の一方的な指示に従うこともせず、むしろ自分たちの革新的なアイデアを土台に本社を絶えず説得した。 本社に挑戦する度胸、これもフツパーだった。 序列と上下関係を最小化したイスラエル防衛軍もこうした事例だ。

「ユダヤ人は２人だが意見は３つ」という言葉があるほど、イスラエルでは熱を帯びた討論が嫌悪の対象ではないという。 首相や閣僚、将軍もニックネームで通じる国だ。 当事者のいないところで言うのではなく、面と向かって言うニックネームだ。

フツパーがうらやましかったのは、組織ごとに幾重にも形成されている韓国社会の階層制と非常に対照的だからだ。 総帥の権威が非常に大きく、平社員がＣＥＯに気楽に会える韓国の大企業は多くない。 フツパーを真似て‘唐突、突飛に’行動すると、上から叩かれる雰囲気の組織が多い。

『創業国家』は、韓国がイスラエルほどベンチャー創業が活発でない理由に体面重視風潮と２０００年ＩＴバブル崩壊の後遺症を挙げた。 本の最初にあるエフード・オルメルト元イスラエル首相の推薦の言葉は、政府が耳を傾けなければならない内容だ。 「韓国の読者がイスラエルの成功が政府の政策によるものと誤解しないことを望む。 私たちは全く干渉していない。 その点が私たちの国家経営で最も評価できることだと思う。 国民が成功の主演になるよう常に彼らの話に耳を傾けて激励してきただけだ」

ソ・ギョンホ経済部門次長