リチウムは世の中を変える金属だ。最も軽い金属だが経てきた変化は重かった。リチウムの潜在力を初めて調べた人が60年前、オーストラリア精神科医ジョン・ケイドだ。彼は尿酸がむしゃくしゃする症状を起こすと信じた。尿酸をリチウムと交ぜて実験用マウスに投与した。リチウムを添加したのは尿酸をよく溶かすためだ。ところで思いがけない結果が出た。マウスはむしゃくしゃすることなく、むしろ物静かになった。10人の同じ患者に同じ治療法を使ったら効果が大きかった。このときからフロイトが心理的原因として説明した精神病は薬で調節可能な生物学的病気になった。これが「生物学的リチウム革命」だ。リチウムの効能はこれだけではない。日本の大分大学研究チームは今年の5月、水道水の自然産リチウム数値が高い所で自殺率が低いという事実を確認したと発表した。