地球に人間が出現した後、長い間、人間の平均寿命は20歳を超えなかった。 紀元後1900年間、寿命の増加速度は一世紀に1年ずつ、ゆっくりと延びてきた。 20世紀に入る頃、アメリカ人の平均寿命は45歳にすぎなかった。 ところがこの一世紀の間、アメリカ人の平均寿命は33年も増えた。 新生児・産婦の死亡率が大きく減り、心臓病・脳卒中予防プログラムが効力を発揮したためだ。 特に、1歳までに死亡する幼児の比率が、20世紀初めに10-15%から1%以下に急減したのが決定的に寄与した。 日本はもっと劇的だ。 1940年代、日本人の平均寿命は50歳だった。 第2次世界大戦後、20年ごとに平均寿命は10歳ずつ増え、現在では‘人生80年’が当然とされる世界最高の長寿国になった。
こうした寿命延長の趨勢が今世紀に加速する可能性はほとんどない。 中国・ベトナムなど開発途上国は2けた経済成長が可能だが、先進国は2-4%も難しいのと同じだ。 誰かが魔法を使って50歳までの死亡率を0にしたとしても、平均寿命は3.5年しか延びない。 米国シカゴ大学老化研究センターのスチュアート・オルシャンスキー・ブルスカンス教授は「不滅の探求」(The Quest for immortality)で、「(20世紀に入って始まった)1次寿命革命が完成すれば、人間の平均寿命は85歳(男性82歳、女性88歳)に達する」と展望した。 さらにこの目標を達成するには、一部の国家(集団)の乳児死亡率の大幅減少、禁煙・節酒、徹底した予防接種、食習慣の改善を通した体重調節、規則的な運動、安全ベルト着用、安全な性生活、国民に対する基本的な治療と健康保険保障の8種類を満足させなければならない、という前提を付けた。