【コラム】経済弱者を泣かせるインフレ
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2024.05.01 13:09
「ヘンリー8世(在位1509~1547年)の時期にイングランドは崩れるように見えた。目撃者によると物乞いがこれほど多かったことはなかった。すべての人が貨幣価値が落ちていると疑った。道徳は貨幣ほど堕落した。何か正しくないという感じは1590年代の金融危機、社会不安、戦争で包まれた欧州全域に広まっていた」。
英エコノミスト誌は2年前の物価上昇を分析する記事で1500年代の欧州の姿をこのように描写した。その上で、こうした混乱の根本原因はインフレだったと診断した。それまでの300年間で欧州の物価はほとんど変化がなかった。だが1500年以降イングランドの物価は50年で2倍に上がった。イタリアの物価は年平均5%ずつ上がった。インフレで社会と政治はますます不安定になった。原因は複合的だ。ペストが大流行した後に人口は急速に増加しており、多くの人が都市に集まった。このため食料品に対する需要は増えたが栽培する人は減った。一部の国では戦争、宮殿建設などに使うため他の金属と混ぜた硬貨を乱発した。これに加えて南米のボリビアで巨大な銀埋蔵地が見つかり、スペインを通じて欧州全域に銀があふれ始めた。通貨量が大きく膨らみ物価が急騰した。「スペインでは銀以外はすべてが高い」という話が出るほどだった。