３０年間にわたり数多くの女性体操選手に常習的に性暴行を繰り返していた元米国代表チーム主治医のラリー・ナサール受刑者（６０）の性的暴行被害者が連邦捜査局（ＦＢＩ）に対する訴訟で米国政府が合計１億ドルを超える合意金を支払うことで合意した。

米司法省は２３日（現地時間）、ナサール受刑者の性的暴行被害者９０人余りがＦＢＩに対して提起した１３９件の訴訟を終結するために合計１億３８７０万ドル（約２１５億円）を被害者に支給する条件で合意したと明らかにした。

司法省は「ナサールの容疑が初めから深刻に受け入れられるべきだった」としながら「今回の合意がナサールの加えた被害を取り返すことはできないが、犯罪被害者が持続的な治癒のために必要な支援を提供するのに役立つことを願っている」と明らかにした。

これに先立ち、米国女性体操界のエースであるシモーネ・バイルズとロンドンオリンピック（五輪）金メダリストのマッケイラ・マロニーら被害者はＦＢＩがナサールの犯罪を認知した後も捜査を適切に行わず被害が続いたとし、２０２２年その責任を問う訴訟を提起した。昨年秋に合意の糸口が見つかった後、今回の最終合意にこぎつけた。

１９８６年から代表チームの主治医だったナサール受刑者は女性選手に常習的に性犯罪を繰り返していた。３０年間で３３０人を超える女性体操選手と患者を相手に性的暴行を犯していたことが分かった。

ＦＢＩがナサール受刑者の犯罪事実を認知して初めて調査に着手したのは２０１５年７月だったが、捜査が先送りされて実際の起訴は２０１６年１１月に行われた。

特に捜査初期である２０１５年、被害者マロニーの陳述を聴取したＦＢＩ要員はナサール受刑者が起訴された後の２０１７年までさえも陳述書を作成していなかった事実が明らかになった。

２０２１年９月開かれた米連邦上院公聴会でマロニーは性犯罪被害の事実をＦＢＩ要員に話すことそのものが精神的に辛かったが、ＦＢＩが自分の陳述を無視したことのほうが苦痛だったと証言した。

米司法省監察官室は２０２１年７月ナサール受刑者の容疑に対するＦＢＩの対応と捜査の特定の側面を批判する報告書を発表した。

ＦＢＩだけでなく米国体操協会と米国オリンピック委員会もナサール受刑者の犯罪を放置した責任に対して被害者５００人余りに訴訟を起こされた後、２０２１年１２月合計３億８０００万ドルの合意金を支給する条件で訴訟を終結した。

ＡＰ通信によると、先立ってナサール受刑者が数年間働き犯罪を犯したミシガン州立大学もこれを放置した責任で被害者３００人余りに５億ドルを支給することで合意した。

被害者４４人を代理する弁護士はナサール関連の訴訟の全体合意金が１０億ドルに達するということは「衝撃的な悲劇が起きたこと」を物語っていると強調した。

ナサール受刑者は２０１８年連邦犯罪とミシガン州法違反でそれぞれ６０年刑と最大１７５年刑を宣告されて服役中だ。