――それではどのように使うべきだろうか。

「企業がＡＩを使う時はすさまじい悩みが必要だ。韓国企業がＡＩをどこで使おうとするのか、『ペルソナ』すなわち対象と活用事例を徹底的に把握しなければならない。どんな業種なのか、国内・国外どこで事業をするのか、規模はどうか、対象が役員なのか社員なのかなど…。これが曖昧ならばお金だけ使って効果はない困難な状況になりかねない」

――企業用ＡＩが個人用と最も違う点は。

「ひとつだけ挙げろと言うならＡＩ倫理だ。膨大なデータを学習して自然語を理解する巨大言語モデル（ＬＬＭ）ＡＩを考えてみよう。企業でＡＩが質疑応答、文書作成、顧客サービスをするのに俗語や差別的な言葉、重複した表現などが出てきても良いのか。セキュリティとプライバシー保護も徹底的に守られなければならない。企業がこうした部分で失敗すればブランドイメージに致命的だ」

実際にＩＢＭはＡＩ事業のスローガンとして「信頼と透明性」を掲げている。このため▽ＡＩの目的は人間の代替ではなく人間能力の強化であり▽ＡＩが作った結果は本来の所有者のものであり▽ＡＩが下した決定は説明可能でなければならない――という３大原則を強調する。ＩＢＭは９月に自社の技術とＡＩ倫理原則を具現した企業用ＡＩプラットフォーム「ワトソンＸ」を発表した。

――多くの企業がＡＩプラットフォームを出している。ＩＢＭの強みは何か。

「特定の技術を強調するよりは、『企業がビジネスに実際にうまく活用できるだろうか』に重点を置いた。家で言えばオーダーメード型設計士だ。一例として、企業が目的に沿って多様に使うことができ、全体ではなく１０～２０％だけ学習すれば良いＡＩモデルを提供して投資収益率（ＲＯＩ）を高めた。その企業の大きなストーリーの中でコンサルティングを提供しともに成功するのが目的だ」

――技術はどこまで発展するだろうか。

「技術はドミノのように前段階がなくては後段階も存在しない。そのため発展スピードを止めるのは難しい。科学者として副作用も認める。技術が発達するほどますます時間がなくなり人々の忍耐心が足りなくなるようだ。手紙が届くのに１カ月かかるのは当たり前だったが、いまではメッセンジャーの返信を数秒も待てない」

――結局ＡＩが雇用を奪いそうだ。

「明らかに消える職業もあるだろう。だが人は働いて成就感を感じ、社会生活をして認められようとする本能がある。何よりどんな分野でも『ヒューマンタッチ』は必要だ。結局人がする付加価値のある仕事が生まれるだろう。ただ技術の力で過去には『１』から始めたことを、いまでは『３』からすることになったものだ」

――ＣＥＯとして組織運営の目標があるならば。

「私を含む社員が働いて会社に通うのがおもしろかったら良いだろう。そうするには互いが互いのためでなければならない。マインドフル（思いやり）でなければならない。会社に通う基準は２種類だ。会社で何かを学ぶことができるか、この会社に何か寄与する機会があるか。もちろん２種類ともあれば最高だ」。

「韓国はとても流行を追っている、ＡＩもそうだ」韓国ＩＢＭ代表の勧告（１）