韓国政府がかつて韓国国籍者だったロシア人チェ・チョンゴンを対北朝鮮独自制裁対象に指定したと２９日、明らかにした。韓国人だったチェ・チョンゴンはロシア国籍を取得した後、核兵器開発に投入された北朝鮮の違法な金融活動を支援してきた人物だ。政府が韓国系の人物を制裁対象にしたのはもちろん、ロシア国籍者を制裁するのも今回が初めてだ。

韓国外交部によると、チェ・チョンゴンはロシア人になった後、対北朝鮮制裁を回避するための会社をモンゴルに設立し、北朝鮮の金融犯罪を支援した。また、国連安全保障理事会の制裁対象である北朝鮮朝鮮貿易銀行のロシア・ウラジオストク代表ソ・ミョンとの共同投資形式でロシアに貿易会社を設立し、違法な活動を続けたことが把握された。チェ・チョン（ｃｈｅｏｎ）ゴンの本来の韓国名は「チェ・チョン（ｃｈｅｏｎｇ）ゴン」だった。チョン（ｃｈｅｏｎｇ）がロシア語の発音で表記が難しく英語表記を変えたと推定される。

チェ・チョンゴンは国内で犯罪関連の捜査を受けている間に指名手配令が出ると、海外に逃避してロシア国籍を取得し、現在はウラジオストクに滞在している。２０２１年度の安保理パネル報告書にもチェ・チョンゴンという名前が登場するが、政府は最近、ロシア人のチェ・チョンゴンがチェ・チョンゴンと同一人物であることを把握し、独自制裁対象に指定したという。

特にチェ・チョンゴンは元韓国人であり、韓国に親戚や知人がいるため、外交当局はチェ・チョンゴンがウラジオストクの同胞社会はもちろん、韓国国内の知人とも交流しながら、北朝鮮の違法行為を支援している可能性があるとみている。

実際、チェ・チョンゴンがこうした人的ネットワークを活用しながら、モンゴルに設立した会社を通して行った対北朝鮮交易額は１００億ウォン（約１１億円）を超えると推定される。特にチェ・チョンゴンは２０１９年にモンゴルの会社を通じてポーランドの北朝鮮大使館などに巨額の外貨送金をしようとした。ただ、当時の送金は受信者が北朝鮮であることが確認されて遮断され、未遂に終わった。

政府はチェ・チョンゴンをはじめ、共同投資家として搭載されたソ・ミョンの個人２人のほか、チェ・チョンゴンが違法行為をした２社をともに独自制裁対象に追加した。制裁対象に指定した根拠は「外為取引法」「大量破壊兵器拡散のための資金調達行為の禁止に関する法律」だ。チェ・チョンゴンの一党が北朝鮮の核・ミサイル開発資金確保のために金融犯罪を支援している状況を確認したという意味と解釈される。

安保理決議は北朝鮮団体および個人との合弁事業を禁止している。チェ・チョンゴンと共同投資した朝鮮貿易銀行は２０１７年に安保理の対北朝鮮制裁対象に指定されていて、ソ・ミョンとの合弁会社を設立したこと自体が違法だ。

制裁対象と金融取引をするためには韓国銀行（韓銀）総裁または金融委員会の事前許可が必要であり、許可を受けていない取引に対しては処罰を受けることになる。

外交部当局者は「チェ・チョンゴンに対する制裁は外交・情報・捜査当局の緊密な連携で決定された」とし「チェ・チョンゴンの国内金融網に対する接近遮断を通して、対北朝鮮制裁違反活動を制約する実質的な効果が表れるだろう」と説明した。続いて「チェ・チョンゴンだけでなく制裁回避のために設立した会社と助力者までも包括的に制裁対象に指定し、制裁効果を高めることができるだろう」と話した。

韓国政府の対北朝鮮独自制裁は、２日に北朝鮮偵察総局傘下のハッカー組織「キムスキー」を指定して以来２６日ぶり。尹錫悦（ユン・ソクヨル）政権は昨年５月の発足以降、今回を含めて計９回にわたり４５個人・４７機関を対北朝鮮独自制裁対象に指定した。