【コラム】「金正日の遺書」入手した脱北博士…なぜ文政権でスパイ扱いされたのか(2)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2022.10.04 14:14
「最高の対北朝鮮諜報将校」に挙げられたチョン・ギュピル大佐は慶北浦項(ポハン)が故郷だ。陸軍士官学校第42期として任官後、2019年に大佐として転役するまで37年間、現役服務した。情報兵科出身であり、1991年、大尉時代に人間情報(HUMINT)を担当する北朝鮮派遣工作部隊(HID)チーム長を務めた縁から、2017年まで26年間は国防部と合同参謀本部傘下の情報本部、国軍情報司令部所属の対北朝鮮工作官として国内外で活躍した。
妻子と離れて一人で中・露・朝国境地帯で「工作」をしながら風餐露宿もし、中国で14年間も在中大使館の武官などとして活動した。特に2010年の北朝鮮による韓国哨戒艦「天安」爆沈と延坪島(ヨンピョンド)砲撃挑発以降、対北朝鮮ホットライン構築のために中国に急派された。
弾劾で2017年5月に文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足すると、中国から帰国したチョン氏は定年を1年6カ月後に控えた2019年3月末に転役した。「高校卒業後初めて自然人になったため自由を思う存分享受する」という期待に胸が膨らんだ。しかし5月14日、国家情報院要員21人が28坪のマンションに集まって22時間にわたり家宅捜索を強行し、一夜にして軍事機密保護法違反(流出)容疑を受けるスパイとして扱われた。現役時代には安重根(アン・ジュングン)義士の「為国献身軍人本分」を信念として国家のために尽くすという使命感と名誉心で生きてきたチョン氏の人生が180度ひっくり返る瞬間だった。