１９７２年４月１２日の誕生日に家族と一緒に金浦（キムポ）空港で飛行機に乗った７歳の少女が、２００９年、韓人（韓国系移民、在外韓国人）初のカナダ連邦上院議員になった。任期は２０４０年７５歳の誕生日まで。今年で１４年目だが、まだ任期が１８年残っている。選挙運動をする必要も、政権が変わる度に顔色を伺う必要もない。１６～１９日、ソウルで開かれた世界韓人政治家フォーラムに出席するため訪韓したヨナ・マーティン議員（５７）の話だ。現在、カナダ保守党院内首席副代表で、世界韓人政治家協議会長を務めている。マーティン氏と１７日、ソウル汝矣島（ヨイド）で会った。

◆娘の一言で韓人団体設立

マーティン氏は政治を始めて以来、毎年韓国を訪れた。多い時は３、４回も訪問した。今回は新型コロナウイルス感染症（新型肺炎）に足止めされ、２０１９年秋以来、約３年ぶりに韓国の土を踏んだ。久々の訪韓が嬉しかったというマーティン氏は、「カナダでは上院議員は（任期が保障されるため）より大きなことに長期的に集中できる。灯台のように、問題が解決するまでそこだけを明るく照らすことができる」とし、「政治は少しミスをしても大きな事件につながりかねないが、政治をすれば私が生きていることが実感できるから、政治がとても好きだ」と述べた。

マーティン議員は平凡な教師だった。１９８７年から２００８年までブリティッシュコロンビア州の中学校で英語を教えていた。そのうち、白人の夫との間に産まれた娘のミソンが４歳の時から言い始めた言葉が心に深く刻まれた。「お母さん、私はどうして肌の色が違うの？ママもパパもなぜ違うの？」。マーティン議員は「私がしっかりとアイデンティティを確立しなければ私の娘が宙ぶらりんな人間になるという気がした」と語った。‘娘のために’２００３年に非営利団体の韓人次世代グループ（Ｃ３）を設立した。他の団体と合同で既存の「韓人文化の日」を拡大し、自主的に７～１２歳の「キャンプ・コリア」と高校卒業者を対象にした「リーダーシップ・カンファレンス」を立ち上げ、毎年行っている。

マーティン氏の政界入りは、当時連邦多文化長官だったジェイソン・ケニー・アルバータ州首相の一言のためだった。ケニー長官は韓人団体長会議でマーティン氏に「あなたが（政治を）したらどうか（Ｗｈａｔ　ａｂｏｕｔ　ｙｏｕ？）」と言い、マーティン氏はその場で「全く考えたことがない」と断ったが、その後、他の韓国人からの勧誘が続いた。悩んだ末、０７年１０月、在カナダ韓国人密集地域のニューウェストミンスター・コキットラム地域の保守党候補として下院議員に挑戦したが、１４９０票差で落選した。

◆「韓国人だから」上院議員指名の理由

災い転じて福となすと言おうか。マーティン氏は落選の１年後、一本の電話を受けた。マーティン氏を上院議員に指名するというスティーブン・ハーパー首相（当時）だった。カナダ上院議員は任期が保障された指名職だ。ハーパー首相が挙げた理由は４つだった。「カナダの人口の５２％が女性だから、上院にはより多くの女性が必要だ」ということ、「バンクーバーに住んでいるから、そこの多様な観点と意見を代弁してほしい」ということ、「教師はコミュニティの事情を隅々までよく知っているから、その経験を活用してほしい」ということ、最後に「カナダ議会には韓国系の人がいない」という理由だった。マーティン氏は「私が特にやったことがなくても、私がヨナ・マーティンだという事実だけで指名された」とし「そう言ってくれてありがたかったし、自信を得た」と述べた。

マーティン氏は上院議員になった後、２０１１年に韓人インターンシッププログラムを作った。議員室ごとにユダヤ人のインターン出身職員がいるのを見たのがきっかけだ。各地域の韓人コミュニティと協力し、人材の推薦を受け、採用の手続きを手助けした。２０１４年からは韓国人２世が運営する脱北者人権団体「ハンボイス」も合流し、脱北者も毎年インターンシップを行っている。同プログラムに参加した韓国人は現在６０人程度だ。マーティン氏は「参加した青年たちはどこに行っても模範的なリーダーになるだろう」とし「参加者たちに『自分を正確に知れば、いつ、どんな機会が来ても自信を持ってできる』ということを伝えたい」と話した。

マーティン氏がインターンシップ養成と共に最も重要視しているのは、韓国戦争（朝鮮戦争）参戦勇士の問題だ。マーティン議員は「カナダの参戦勇士は命をかけて韓国に行かれた方々だ。韓国と韓国人をとても愛していて『いつかまた、韓国に行きたい』とおっしゃっている。その方々を通じて韓国と私自身を見直すようになった」とし「韓国戦争が『忘れられた戦争』ではなく『もう忘れられることのない戦争』になるようにしたい」と述べた。議員は現在、カナダの教科書に韓国戦争の内容を反映するプロジェクトを進めている。

「私の夢は、非常に大きいが、韓半島（朝鮮半島）の平和だ。韓国は経済的には先進国だが、（今はまだ不安定な）平和も、我々が生きている間に実現できると信じている。私も韓国系カナダ人政治家として、その時までできることは全部やってみようと思う」