禁煙が難しいのは毒性学（ｔｏｘｉｃｏｌｏｇｙ）で説明することができる。気体状態のたばこの煙として吸入したニコチンが脳に到達するまでの時間は７秒から１０秒ほどだ。呼吸を担当する肺は３億－５億個の肺胞からなるが、この煙の中のニコチンはブドウの房のような形をした肺胞を通じて体内に吸収される。吸収されたニコチンは血流と共に脳に移動してストレスホルモンのコルチゾールとアドレナリンを過多分泌させる。たばこの煙を吸い込むとすぐに覚醒効果を感じることができるのは数えきれないほど多い肺胞のためだ。

半面、喫煙代替材とされるニコチンガム・飴は口腔粘膜を通じてニコチンを吸収する。粘膜を通じたニコチン吸収は喫煙ほど効果は速くないうえ、脳に到達するニコチン量も少ない。たばこの煙を吸い込むほどすぐには覚醒効果が表れないため、満足感も落ちるしかない。喫煙代替材がどれほど発展しても、３億－５億個にのぼる肺胞を通して得られる気体吸入反応には及ばない。

ニコチン半減期も禁煙を妨げる要素だ。体内に吸収されたニコチンは１、２時間後に半減する。半減期が過ぎればたばこ１本がまた吸いたくなる。米国心臓協会が「ニコチン中毒は史上最も断つのが難しい中毒」と定義する理由だ。

禁煙が容易ではないため世界的に対応している。２００５年のたばこ規制枠組み条約（ＦＣＴＣ）をはじめ、各国政府は強力なたばこ規制政策を施行している。たばこ税引き上げによるたばこ価格上昇で喫煙者のたばこ製品購買力を低める政策（第６条）と非喫煙者をたばこの煙から保護するための禁煙区域政策（第８条）が代表的な例だ。韓国もＦＣＴＣを受け入れて施行している。国内の成人喫煙率は２００８年の２７．８％から２０１９年には２１．５％に低下したが、最近は停滞期に入ったという評価もある。

こうした中、ＦＣＴＣを上回る強力なたばこ規制政策が登場した。ニュージーランド政府は２００８年以降の出生者は成人になってもたばこを購入できないという法案を来年準備すると発表した。アイシャ・ベラル保健副大臣は「若者が喫煙を始めないようにする」と説明した。たばこはやめるものではなく生涯我慢するものだという禁煙者の助言はでたらめではない。ニュージーランドのたばこ購入禁止法が成功することを祈る。

カン・ギホン／産業１チーム記者