１４日に北米出張に向かったサムスン電子の李在鎔（イ・ジェヨン）副会長が今週帰国する予定だ。財界は特に李副会長の訪米成果に注目している。投資プロジェクト発表と「ニューサムスン」のビジョン具体化、定期人事、組織改編などがかみ合っているからだ。

２１日の財界によると、訪米中の李副会長は２４日ごろ帰国するものとみられる。李副会長は１４日に金浦（キンポ）空港からカナダ・米国への出張に出発した。５年ぶりの米国行きで財界内外の関心は高い。

◇２４日帰国予定…５年ぶりの米国出張

サムスン電子によると李副会長は１６日と１７日に米国財界関係者と相次いで面談した。いずれも李副会長が構想するサムスンの「未来の収益源」と直接関連がある分野だ。

李副会長は１７日に米ニュージャージー州にある世界最大の移動通信事業者であるベライゾンの本社を訪問し、同社のハンス・ベストベリ最高経営責任者（ＣＥＯ）らと次世代移動通信分野の協力案を議論した。

サムスン電子はベライゾンと緊密な協力関係を続けている。昨年には７兆９０００億ウォン規模の第５世代（５Ｇ）移動通信装備を含んだネットワークソリューション供給契約を結んだ。韓国の通信装備輸出史上で単一プロジェクトとしては最大規模だ。

業界は両社がビヨンド５Ｇ、第６世代（６Ｇ）のような次世代通信分野で協力を拡大していくと予想した。李副会長とベストベリＣＥＯは２０１０年にスペインで開かれたモバイル・ワールド・コングレス（ＭＷＣ）でそれぞれサムスン電子最高運営責任者（ＣＯＯ）、エリクソンＣＥＯとして会ってから親密な関係を続けているという。

李副会長は前日にマサチューセッツ州でモデルナのヌーバー・アフェヤン会長と会い、新型コロナウイルスワクチン共助と追加協力案について意見を交わした。アフェヤン会長は２００９年にモデルナを共同創業した人物だ。現在はバイオ・製薬分野の投資会社であるフラッグシップ・パイオニアリングを経営している。

サムスンバイオロジックスは５月にモデルナとメッセンジャーＲＮＡ（ｍＲＮＡ）新型コロナウイルスワクチン導入契約を結び８月に生産を始めた。先月からは当初計画を２カ月ほど前倒しして生産量のうち一部を韓国国内に供給している。李副会長はこの過程でグループ内にタスクフォースを運営し、モデルナ最高経営陣とオンライン会議をするなど「水面下の役割」を担ったという。

市場調査会社のフロスト＆サリバンによると、サムスンバイオロジックスは昨年バイオ医薬品委託生産（ＣＭＯ）市場でシェア９．１％を記録し世界２位となった。設立１０年で成し遂げた成果だ。ＣＭＯ市場も急成長している。フロスト＆サリバンは２０１９年に１１９億ドル水準だった世界のＣＭＯ市場が２０２５年ごろには２５３億ドル規模に拡大すると予想した。

これに先立ち李副会長は８月に今後３年間に２４０兆ウォンを半導体、バイオ、人工知能（ＡＩ）に一気に投資すると明らかにしている。また、バイオ産業で「第２の半導体神話」を創出するという構想を明らかにすることもした。

◇米国に２０兆ウォンの投資、近く決定か

また別の関心事は「２０兆ウォン投資プロジェクト」だ。サムスン電子は今月中にテキサス州オースティンに続き米国内２番目のファウンドリー（半導体委託生産）工場建設地を確定発表するものとみられる。投資規模は１７０億ドル（約２０兆ウォン）に達する。

サムスン電子は５月の韓米首脳会談で米国内ファウンドリー増設計画を公式化した。いままでテキサス州テイラーとオースティンなど５カ所の候補地を検討してきたという。現在では２億９２００万ドルの税制インセンティブを承認したテイラーに決まる可能性が大きい。

年内に工場用地が確定すればサムスン電子の第２工場は２０２４～２５年ごろ稼動できるものとみられる。ここでは３ナノメートルプロセスが導入されると予想される。ファウンドリー世界１位の台湾ＴＳＭＣとの競争が本格化しそうだ。

◇来月初めに役員人事…人事幅に関心

さらに来年からは新人事制度を導入するという方針だ。職級単純化、絶対評価拡大、同僚評価制導入などが盛り込まれるものとみられる。水平的で柔軟な企業文化を作るという趣旨からだ。現在は内部意見を取りまとめているところだ。

年末の人事にも耳目が集中する。サムスン電子は遅くとも来月初めに定期役員人事をするものとみられる。金奇南（キム・ギナム）、高東真（コ・ドンジン）、キム・ヒョンソクの３人代表理事は３月の株主総会で全員再選任された。財界関係者は「だが李副会長が『ニューサムスン』を強調しているだけに、世代交代を含む中幅以上の人的刷新案が出るかもしれない」と予測した。