【コラム】韓国大統領選、ビジョンなく政治工学ばかり
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2021.07.20 14:50
2007年1月、高建(コ・ゴン)元首相が大統領選挙不出馬を宣言した。一時は支持率30%台を上回る与党の強力な大統領候補だった。大韓民国最高の行政家である高元首相が退いたことについて権力の意志が弱かったという分析があるが、問題はビジョン不足だった。墜落する盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権を引き継いで国をどうやって正しく立て直すのかというビジョンを提示できなかった。同年4月、鄭雲燦(チョン・ウンチャン)元ソウル大総長が大統領選出馬を辞退した。大韓民国最高の知性だったが、大統領になれば何をするというビジョンがなかった。住居価格をどう抑えるのか、教育をどう改善するのか、年金にどう手を加えるのか…。こうした難題について明確な解決策を示すことができなかった。国民は冷静だった。最高の行政家、最高の知性という看板が通用しなかった。
近い例では潘基文(パン・ギムン)元国連事務総長がいる。忠清(チュンチョン)待望論を背に2016年に支持率1位になった。しかし2017年初めに大統領選のリングに上がるとすぐに棄権した。外交官特有の慎重さ、余裕のない資金力など、さまざまな敗因が取り上げられた。問題の核心はビジョン不足だった。二極化、青年失業、少子高齢化など問題を「こうして解決する」というものがなかった。華麗な経歴だが虚しいスローガン、イメージ政治では民心をつかむことはできない。
また大統領選の季節が訪れた。大韓民国の建国以降、政権が交代するたびに報復の連続だった。今回も「生きるか死ぬか」のすさまじい戦いだ。口にしがたいプライバシー暴きに焦点が合わされている。これを機会に低質ユーチューバーが金儲けのため「違ったらごめん」式の暴露で煽る。乱暴な政治家らは刺激的な寸評で自分の顔を広く知らせるのに忙しい。政策対決は消えた。なんとか一つ見えるのが基本所得をめぐる攻防だ。国政懸案が基本所得しかないのだろうか。