これからの「国民の力」の代表は３６歳の李俊錫（イ・ジュンソク）だ。きのうの党代表選挙で李代表は一般国民世論調査と党員投票結果を合わせて９万３３９２票（全体の４３．８％）を得て１位となった。２位の羅卿ウォン（ナ・ギョンウォン）候補の７万９１５１票（３７．１％）との得票率の差は６．７ポイントだ。

彼は憲政史上主要政党で初の３０代党代表だ。文在寅（ムン・ジェイン）大統領の「大きなことをやった。政治史に長く残るだろう」という言葉はただのあいさつではなく事実でもある。わずか１カ月前には彼の勝利は想像でも可能ではないシナリオだった。議員経験がなく、党最高委員が主要経歴であるほどだったから競合候補と比較して日が浅い履歴の所有者だ。その上彼は組織もなく、派閥も、出身地域も「本流」とみるのは難しい。

そんな彼が既存の政治文法と政治常識を破って急浮上した。その推進力の要諦は「変化への強い熱望と期待」だった。国民の力の党員の７０％が５０歳以上で嶺南圏の党員が５５％だが相当数が李代表を選択した。李俊錫代表体制が「国民の力」が政権交代をするのに有利と考えたという意味だ。ここに４月の補選・再選挙を通じて政治的な声を発見したＭＺ世代（１９８０～２０００年代生まれ）が加勢した。彼らは１９８７年体制で強固に続いてきた産業化・民主化勢力の既得権政治と年功序列中心の社会・経済体制に対する強い拒否感を表出してきた。

そのため李代表が受諾演説で「２０２１年と２０２２年は私たちが民主主義を多数による独裁、牽制を受けない偽善という野蛮に変質させた人々を審判した年と記憶するだろう。審判に向けては変化して自強し私たちがより一層魅力的な政党に生まれ変わらなければならない」とした診断は正しい。

３０代青年党代表として勝利の喜びは短く、責任の重さは格別だろう。彼は「公正競争」以外には特別なビジョンを見せられなかったという評価を受けている。自ら「変化に対する激しい考え」と表現したように、公職候補者資格試験や演説大戦を通じた報道官団の公開選抜のような技術的変化を超え根源的革新方向を提示しなければならない。

彼は朴槿恵（パク・クネ）前大統領の赦免と関連し、「弾劾は正当だった。党代表として公的な領域では赦免論などを取り上げるつもりはない」と話すなど「タブー」に挑戦する勇気を見せた。しかしそれだけでは足りない。国民の期待にこたえる方向で党を革新し、政治改革を成し遂げるためには絶え間ない奮闘と知恵が必要だ。彼は１０年間政界にいたというが、主に「評論家」の役割にとどまった。最大野党を率いていくには華麗な個人技だけではならない。多くの人たちの助力を受けなければならないが、そうするならば謙虚に、かつ傾聴しなければならない。

きのうの党大会ではまた、チョ・スジン、ペ・ヒョンジン、キム・ジェウォン、チョン・ミギョン候補が最高委員に、キム・ヨンテ光明（クァンミョン）乙党協委員長が青年最高委員に選ばれた。女性が３人で、このうちチョ議員とペ議員は初選だ。これもまた過去に見られなかった驚くべき変化だ。国民と党員らが李俊錫代表体制にかける期待がそれだけ切迫しているということを意味する。

大統領選挙までわずか９カ月が残った。国民の力の支持率が最近３０％台に上がったとはいうが、党内には１０％台の大統領候補が１人もいないのが現実だ。候補一本化など野党圏統合と連帯の複雑な方程式を解くのも李代表の役割だ。失敗が誤りにつながらないよう省察して疎通しなければならない。

李俊錫代表体制のスタートは「共に民主党」にも少なくない影響を及ぼす見通しだ。民主化勢力としての道徳的優位が摩耗し、いまはダブルスタンダードの代名詞といわれる民主党は追いかける境遇になった。いまは与野党間でだれがもっと多く、まともに変わるかの競争が始まった。韓国政治のためには幸いなことだ。