新型コロナウイルスの第４波が事実上始まったというタイミングで韓国政府の防疫対策とワクチン政策が同時に道を見失った。第３波よりはるかに大きな波がくるというのに迅速で果敢な社会的距離確保措置を出すこともせず、「ピンセット防疫」にとどまっている。同時にアストラゼネカ製ワクチンの接種をめぐり混乱が大きくなり、ワクチンに対する不信も危険水位だ。

防疫とワクチンは新型コロナウイルス克服の二頭立て馬車の役割をすべきなのにいまは２つとも脱線する危機だ。まず当局の防疫政策を見ればいったい基準が何なのか疑問だ。韓国政府は１１日に終了予定だった現行の社会的距離確保（首都圏２段階、非首都圏１．５段階）と全国での５人以上の私的会合禁止措置を来月２日まで３週間延長するときのう発表した。首都圏のカラオケ、ジム、食堂・カフェなどの営業時間制限は当分現行通り午後１０時までで維持することにした。

これに対して防疫専門家らは昨年末に始まった第３波当時の防疫失敗を踏襲する恐れがあると警告する。当時韓国政府は社会的距離確保段階を引き上げず一部施設に集中する「ピンセット防疫」に固執し拡散を拡大した。専門家らは「感染者４００～５００人以上なら２．５段階に引き上げるのが正しい」として自ら作った防疫基準を破る政府を叱責している。

ワクチン政策の混乱はさらに深刻だ。７日に欧州医薬品庁（ＥＭＡ）が「アストラゼネカ製ワクチンと血栓症に因果関係がある」と発表し混乱が加重された。ドイツやフランスなどが接種対象年齢を制限し、英国は３０歳未満には別のワクチンを接種するよう勧告した。

アストラゼネカのワクチンに過度に頼ってきた韓国が受けた衝撃はもっと大きかった。驚いた疾病管理庁は６０歳未満の接種をＥＭＡの発表直前に保留した。ところが１日もたたずに保健福祉部のクォン・ドクチョル長官は「専門家の検討を受け継続して接種すべき」と発表した。疾病管理庁と保健福祉部の足並みの乱れが露わになった。１１日に予防接種専門委員会を開き再び接種を許容するだろうという見通しも出ている。わずか３日で「Ｕターン」するならばなぜ接種を保留したのか問わざるを得ない。まごつきながら接種への影響だけ招いた。４－６月期の接種予定者７７０万人もずれが生じないという保障はない。それでも「先制措置だった」と主張するのだからあきれる。アストラゼネカのワクチンに対する不満が大きい状況で韓国政府が混乱を育てた責任は大きい。

先進国が先を争ってワクチン確保にオールインした昨年の春以降、文在寅（ムン・ジェイン）政権はＫ防疫と抗体治療剤を過信してワクチン購入を疎かにした。当時のワクチン確保戦略の判断ミスの代価をいま国民が高く払っている。

ワクチンが不足しているのに感染者が急増するこのような時ほど冷静でなければならない。私たちはアストラゼネカのワクチン以外に代案があまりない。他の国のように幅広く年齢を制限するには手に握ったカードがない。したがってアストラゼネカのワクチンの不可避性と長短所を国民に率直に知らせ説得しなければならない。外信によると６０代のアストラゼネカ製ワクチン接種利益は害悪の７０倍、５０代は２６倍だ。高齢者には接種を再開するのが正しい。ただ２０代は害悪が若干多いためアストラゼネカ製ワクチンの接種を制限しファイザー製ワクチンに変えることが代案だ。

ワクチン追加確保に死活をかけるべきなのはもちろんだ。ファイザー製ワクチン導入を繰り上げ、モデルナ、ヤンセン、ノババックスのワクチン導入量と時期を具体化しなければならない。国際社会が検証したロシアのスプートニクＶを導入する案も検討しなければならない。

防疫とワクチン政策が同時に絡まる状況でこれまで中央災害安全対策本部長を務めてきた丁世均（チョン・セギュン）首相が大統領選挙出馬に向け近く辞任するという。文在寅大統領は沈黙する時ではない。直接立ち上がり当面の危機と混乱を収拾して特段の対策を提示しなければならない。