韓国では療養病院の新型コロナウイルス感染症（新型肺炎）集団感染（クラスター）が拡大し、感染者だけでなく非感染者の死亡者が増加している。新型コロナ患者の診療と身の回りの世話をする人材が限界に達し、非感染者に被害が及んでいるということだ。

ソウル九老区（クログ）のミソドゥル・シルバーケアで過去２週間に非コロナ患者が１０人亡くなっていたことが確認された。この病院のある医療スタッフは３０日、中央日報の電話取材に対してこのような事実を公開した。保健当局は今月１５日、この病院に最初の感染者が出てきたことを受け、同一集団（コホート）隔離措置を取った。人の出入りを全面統制し、感染が広がらないようにしようとする措置だ。だが、初日に３人しかいなかった感染者は雪だるま式に膨らみ、３０日午前０時基準で１９０人まで増え、７人が亡くなった（九老区集計）。このうち６人は病院で亡くなり、１人は転院先で亡くなった。

非コロナ患者の最初の死亡者は２３日ごろに発生した。その後２６～２７日に死亡者が急増し、３０日までの時点で１０人に増えた。ほとんどが７０～９０代の基底疾患者だ。脳出血・脳梗塞・四肢麻ひなどの疾患があるか、腎臓透析治療を受ける途中で亡くなった。この病院では、コホート隔離前のおよそ２週間、死亡者はいないか、いても１～２人にすぎなかったという。医療システムが崩壊して「超過死亡」が発生した。

この病院には３０日現在５１人の感染者と９０人余りの非感染者がいる。非感染者のストレスは並大抵のものではない。この医療スタッフは「一般患者も２日ごとに新型コロナ検査を受けるところに、十分なケアを受けることができないでいる」とし「認知能力がある患者は大小便の処理をする医療スタッフに申し訳ないと言ってご飯を食べない。さまざまな面でコンディションが落ちたことが死亡に影響を及ぼしたようだ」と話した。

この病院にはもともと医師が１３人いたが、現在は１０人に減った。看護師も３分の１に減り、交代勤務ができない。相当数の看病人も感染し、一部は自宅隔離となって病院から出た。保健当局は感染患者だけを他の機関に転院させている。２９日には保健当局が、感染者の出ていない病室に入院したか、熱がないなどの条件に合う非感染患者を他の病院に転院させるとして１２人を選んだ。だが、最終的に受け入れ先を探すことができず転院は白紙に戻った。

この病院の感染者のうち、転院先で完治判定を受けた人もその後が曖昧になった。保健当局は、患者に症状がないため家に帰ってもらおうとしても家族が世話できない場合が多く受け入れが難しい。そのため元の病院で再び受け入れろということだ。病院の医療スタッフは「看病人がほとんど残っていないのに、どうしろというのか分からない」と話した。

大韓医師協会は２３日、医療危機緊急事態を宣言し、新型コロナ患者治療に医療資源が集中して今年死亡率が６％上昇したと主張した。２万人ほどが超過死亡した。英国オックスフォード大学の「データで見る世界」を引用してこのように分析した。また、ソウル大学医大予防医学科のホン・ユンチョル教授が２０１０～２０２０年統計庁の死亡率変化を反映し、今年１～３月の新型コロナ超過死亡率を分析したところ、大邱地域で非新型コロナ死亡者が３月１８７人だと推定した。

大韓医師協会の崔大集（チェ・デジプ）会長は「療養病院入院患者はいくらでも悪化する可能性がある。普段、肺炎になっても急性患者治療病院に行って治療を受ける。ところがコホート隔離されればそうはいかなくなる。今後も引き続き超過死亡者は出てくる」と話した。