韓国銀行（以下、韓銀）が新型コロナウイルス感染症（新型肺炎）が収束しても、海外旅行の敬遠、保護貿易基調の強化、増えた失業の影響などが景気回復を遅らせするだろうという見通しを出した。新型コロナを論外としても韓国経済が直面している状況は容易でないという診断だ。特に輸出は遅い半導体の回復と原油安、米中葛藤の三重苦の中、当初の予測値に大きく及ばないと予測した。

韓銀は１１日、金融通貨委員会を開き、このような内容を盛り込んだ通貨信用政策報告書を議決した。通貨信用政策報告書とは、通貨信用政策決定の内容と背景、今後の政策の方向などをまとめて国会に提出（年２回以上）する報告書だ。今回の報告書は新型コロナの世界的感染拡大の影響、米中貿易紛争関連の不確実性、国内外の金融市場の現状と展望などがまとめられた。

韓国銀行はまず、新型コロナ感染拡大の速度がやや鈍化し、世界経済が下半期から改善傾向を見せると予想した。ただし、回復速度や反騰の時期の予断は困難とみた。確実なワクチン・治療薬の開発までは経済活動の再開と萎縮を繰り返しながら景気回復に変動がある可能性があるという意味だ。全体的な成長不振の見通しと低い物価上昇圧力などを考慮し、通貨政策の緩和基調を維持していくというのが韓銀の立場だ。５月末の金融通貨委員会で明らかにした立場と同じだ。韓銀は今年の３月と５月の２度にわたって基準金利を１．２５％から０．５０％までの合計０．７５％ポイント引き下げた。

少なくとも２０２２年までゼロ金利水準を維持するという米国の連邦準備制度（ＦＲＢ）の連邦公開市場委員会（ＦＯＭＣ）定例会の結果についての言及も出た。パク・ジョンソク韓銀副総裁補は「ＦＲＢが緩和基調を持続すれば、米国の経済とグローバル経済に肯定的な効果があるだろう」とし「ただ、韓国の金融政策はあくまでも国内経済状況や金融環境を優先的に考慮すべきものであり、外国の金融政策は１つの考慮要因」と述べた。

報告書に含まれた参考資料を通じて、韓銀は特に輸出鈍化の動きに警戒する必要があると見た。韓銀関係者は「各国の前例のない封鎖措置による世界的な供給の支障、購入活動制限と通関・物流の遅延などの国際貿易が大きく萎縮した状況だとし「その程度が２００８年の金融危機よりも深刻な状況だが、当時より交易が拡大した中国・ＡＳＥＡＮ５の成長率が大幅に下落するとみられる」と述べた。

韓銀が大きく３つのリスクに注目した。まず、半導体の景気回復が遅れている点だ。新型コロナの感染拡大が短期的には半導体の景気にマイナスの影響を与えていると見た。韓銀関係者は「非対面の経済活動が活発化しサーバーの需要が増える肯定的な側面にもかかわらず、移動制限措置により半導体需要の割合が大きい携帯電話・家電製品など耐久消費財の需要が減少した負担の方が大きい」と述べた。これにより、半導体の景気改善の程度が期待に及ばず、半導体の輸出が増える時期も多少遅れる見通しだ。

原油安も負担になる。通常、原油価格の下落は韓国のような原油輸入国では実質所得増加、生産コスト削減など肯定的に作用する。しかし、今は産油国の景気不振、船舶・機械類・鉄鋼などの原油関連業種の業況悪化など輸出減少で失うものの方が多い状況だと見た。韓銀関係者は「１－３月期の中東地域と独立国家共同体（ＣＩＳ）諸国への輸出が増加したが、国際原油価格が大幅に下落した４月に入ってから減少に転じた」とし「中南米輸出の減少規模も大幅に拡大した」と述べた。

泣き面に蜂で、米中の対立が再び浮き彫りになっている。両国の葛藤が昨年のように世界経済の不確実性を高め、グローバル投資を萎縮させる可能性が高いとみた。主要国よりも景気改善の速度が良好な中国経済が米中の対立で再び打撃を受けるのは対中輸出の割合が大きい韓国の立場ではかなり大きな負担になる。イ・サンヒョン韓銀金融政策局長は「このような対外条件を考慮すると、ことしの輸出は２月の展望地を大きく下回るだろう」と述べた。韓国銀行は新型コロナの変数を反映していなかった２月にことしの商品輸出（国内総生産のうち、実質財貨輸出）が１．９％増加すると予測した。

新型コロナ感染拡大後の主要国の物価動向も点検した。これによると、ほとんどの国で消費者物価上昇率が急速に鈍化した。移動制限による需要不振と原油価格の下落などが影響を及ぼした。韓国もことしまでは物価が低い水準を維持するというのが韓銀の見通しだ。韓国銀行関係者は「来年は原油価格の下落の影響が消える中、景気改善、福祉政策の影響縮小などで物価上昇率が徐々に高くなるだろう」と述べた。