韓国通信大手のＫＴがビル＆メリンダ・ゲイツ財団と提携して３年間１２０億ウォン（約１０億４６００万円）規模の感染病防疫研究を行う。ＫＴは１７日、「ビル＆メリンダ・ゲイツ財団の投資を受けて３年間１２０億ウォン規模の『感染病に備えるための次世代防疫研究』を行う」と明らかにした。ＫＴ側はその背景を「ゲイツ財団は韓国が高いスマートフォン普及率と５Ｇ（世代）移動通信インフラを保有している点、新型コロナウイルス感染症（新型肺炎）事態を通じて防疫システムが効果的に作動している点に注目し、韓国でＩＣＴ（情報通信技術）技術を活用した感染病投資研究が行われるよう希望した」と説明した。

◆ＫＴ、人工知能・ビッグデータで感染病対備ソリューション開発

これを通じてＫＴとゲイツ財団は今後３年間にわたり人工知能（ＡＩ）とビッグデータで感染病に備えるソリューションを開発することになった。ＫＴは財源を基に「人工知能基盤の感染病早期診断アルゴリズム」と通信データを活用した「感染病拡散経路予測モデル」を開発する。ゲイツ財団は研究に必要な費用のうち５０％をファンド形式で支援する。

◆韓国内の大学・研究機関・スタートアップも参加

ＫＴは研究成果のために大学病院・研究機関・スタートアップと共同研究を進める。高麗（コリョ）大学医療院の金宇柱（キム・ウジュ）教授と韓国科学技術情報研究院（ＫＩＳＴＩ）、モバイルドクター、メディブロックがコンソーシアムに参加する。高麗大学医療院はインフルエンザ監視体系の運営および病原体遺伝子序列分析を、ＫＩＳＴＩはインフルエンザの流入および流行予測モデリングを、モバイルドクターはアプリ基盤のインフルエンザ診断データ分析を、メディブロックはブロックチェーンのデータ共有プラットフォーム開発をそれぞれ担当する。

ＫＴは最初の課題として、モバイルドクターと共同でスマートフォンでインフルエンザの類似症状を自動入力できるアプリを開発する計画だ。このアプリはモノのインターネット（ＩｏＴ）センサーを通じて測定された利用者の体温、インフルエンザ症状などを保存した後にアプリに蓄積されたデータを人工知能で分析してインフルエンザの可能性を導き出す。これとあわせてＫＴは通信データを基盤とした人口移動データとインフルエンザゲノムの検査データ、インフルエンザ流行地域を分析してインフルエンザ拡散経路を突き止める研究も進める。地域別インフルエンザ発生推移を分析して地域別インフルエンザシーズンの予測モデルも開発する。

◆「コロナのような新型・変種感染病対応にも寄与」

ＫＴはゲイツ財団と進める今回の研究が新型コロナのような新型・変種感染病への対応にも寄与するものと期待している。研究で開発されたプラットフォームとアルゴリズムが感染病流行前にその危険を知らせ、感染病の早期診断を助けて迅速な対応ができるためだ。ゲイツ財団保健革新局のＡｎｄｒｅｗ　Ｔｒｉｓｔｅｒ副局長は「ビッグデータ分析とモバイル技術を使って病気の移動および拡散経路を予測できるなら、時間を節約して多くの生命を助けることができる」とし「ＫＴの研究は韓国だけでなく感染病の危険に直面した他の国家にも重要な役割を果たすことができるだろう」と話した。

一方、ＫＴとゲイツ財団は２０１８年の世界経済フォーラム（ＷＥＦ）「データ革新ワーキンググループ」を通じて初めて縁を結んだ。その後２０１９年４月、ＫＴはグローバルヘルス研究基金「ライトファンド（Ｒｉｇｈｔ　Ｆｕｎｄ）」が主催するＩＣＴフォーラムで「感染病拡散防止プロジェクト」などＩＣＴ基盤の感染病拡散防止活動を発表した。この日の行事に出席したゲイツ財団関係者がＫＴの感染病対応力に関心を示したことが今回の研究の礎石になった。ＫＴのＡＩ／ＤＸ融合事業部門のチョン・ホンボム部門長（副社長）は「ゲイツ財団との協業を通じて世界的に認められている大韓民国の感染病対応力を一段階高めるための一助となるだろう」としながら「今後も人工知能やビッグデータなどを世界的な感染病予防のために活用していくにあたり先駆者的な役割を果たしていきたい」と話した。