２日の東京都議会議員選挙で小池百合子都知事の新党の圧勝は早くから予告されていた。選挙１週間前の世論調査で都民ファーストの会は第１党である自民党を引き離した。選挙戦が本格化し新党は６０％前後の小池個人支持を引き込んだ。

事前投票者が前回の選挙より１．５倍多い１３５万人に上ったのも新党勝利の信号弾のひとつだった。事前投票の相当数が小池新党に集まったという。実際に選挙運動最終日の１日、小池都知事の遊説会場には多くの人々が集まり歓呼した。小池新党は無党派だけでなく組織票が硬い公明党支持層も吸収した。

これに対し自民党は世論の逆風の中で選挙を行った。安倍晋三首相はこの日秋葉原駅前で街頭演説をした。安倍首相の屋外遊説はこの日が初めてであり最後だった。安倍首相は前回の選挙で１２回も街頭演説をした。自民党が安倍首相を選挙の顔として出すのに自信がなかったという話だ。

安倍首相は友人が理事長を務める加計学園の獣医学部承認問題などで支持率が最低３６％まで落ちた。１日の遊説会場では「帰れ」「安倍辞めろ」という聴衆からの野次が激しく飛んだ。前例がない現象だ。日本共産党の志位和夫委員長はこの日の遊説で「（安倍首相の）友達の、友達による、友達のための政治」と安倍首相を批判した。自民党は選挙期間に稲朋美防衛相が自衛隊を選挙に利用するかのような発言をしてさらに窮地に追い込まれた。自民党の組織票は小池ブームを防ぐことができなかった。

今回の選挙惨敗で安倍首相の政治的打撃は避けられなくなった。地方選挙だが安倍首相１強の国政運営が争点になったためだ。安倍首相が２０１２年に再執権してから総選挙と地方選挙で負けたのは初めてだ。４度の衆議院・参議院選挙で連続で勝ち、自民党の議席を磐石にした「安倍不敗神話」は跡形もなかった。

安倍首相主導の憲法改正構想は弾みを付けにくくなった。安倍首相は１１月ごろに自民党改憲案を国会に提出し来年にも国民投票を実施する計画を公表した。改憲案は平和条項と呼ばれる第９条を改正し自衛隊の存在を明記することが核心だ。

だが今回の選挙で安倍首相の求心力が下がり、彼の思い通りの改憲ができるかは不透明だ。今回の選挙が安倍首相の一方的国政スタイルに対する審判の性格が強いためだ。野党も安倍首相による改憲には反対だ。自民党内でも９条改正や来年の国民投票発議日程に対しては慎重論が少なくない。

安倍首相の長期政権街道にも赤信号が灯った。来年９月の自民党総裁選挙、来年末までの衆議院選挙まで安倍首相には険しい道が予想される。加計学園の獣医学部承認をめぐる側近議員のスキャンダルはまだ鎮まっていない。今後自民党内で安倍首相に反旗を翻す派閥が出てくるのか注目される。安倍首相は短期的に内閣改造と活発な外交活動で雰囲気反転を試みるものとみられる。内閣改造は来月と予想されるが前倒しされる可能性が大きい。

小池新党は今回の勝利でさらに注目を浴びることになった。第１野党の民進党も今回の選挙で惨敗し存亡の岐路に立ったためだ。小池新党が次期衆議院選挙に飛び込めば政党間の離合集散を通じた政界改編が表面化するという指摘も出ている。

実際に都議選は総選挙の前哨戦でもあった。自民党は２００９年７月の都議選で大敗した後、1カ月後の衆議院選挙でも惨敗し民主党に政権を譲り渡した。１９９３年６月の都議選では創設１年の日本新党が一躍３党に上った。自民党は1カ月後の衆議院選で惨敗し細川護熙日本新党代表を首相にする非自民連立政権が誕生した。都議選の破壊力はそれだけ大きい。