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<第19代大統領・文在寅>雇用創出に10兆ウォン…THAAD問題、米中間で外交試される

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2017.05.10 11:19
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◆経済

第19代韓国大統領に当選した文在寅(ムン・ジェイン)氏に準備期間はない。すぐに実戦だ。目の前の経済懸案を文氏が率いる新政権がどのように解決していくのか、公約を点検した。

 
文氏の大統領当選とともに10兆ウォン(約1兆円)規模の補正予算がカウントダウンに入る。補正予算の表札は「雇用」に定められている。7日に文氏側の選挙対策委員会(選対委)は、政府が年初に発表した「2017年度公務員採用計画」に加え、1万2000人の公務員を追加で採用すると明らかにした。ユン・ホジュン選対委政策本部長は「追加採用と教育訓練に必要な予算を雇用補正予算に、人件費と法定負担金は『2018年度本予算』に反映する」と説明した。公共雇用81万人創出は文氏の核心公約の一つだ。問題は財源だ。

文氏の公約には増税案もある。文氏は先月19日のテレビ討論で「富裕層と財閥大企業中心に増税をするべき」と明らかにした。公約集によると、利益(課税標準)500億ウォン超過企業に対する法人税の最高税率が22%から25%に上がる。大企業の大株主が株式譲渡過程で得た利益(株式譲渡差益)に適用する税率も20%から25%に引き上げられる。

高所得者に対する税金も強化され、5億ウォン超過で40%の所得税最高税率が3億ウォン超過で42%に調整される。高額資産家に対する相続・贈与申告税額控除率は7%から3%に引き下げられる。

キム・カプスン東国大経営大教授は「税目と引き上げ率、対象と目的を明確にした後、国民を十分に説得する過程がなければいけない」とし「法人税引き上げも企業が労働者の賃金や家計など他の部分に税負担を転嫁しないよう厳密な設計が必要だ」と助言した。法人税引き上げ計画が国際的な流れに逆行するという懸念も新政権は考慮しなければいけない。財閥改革と経済民主化も文氏の経済公約の核心だ。文氏は過去の調査局のような大企業担当部署を公正取引委員会に拡大・設置すると公約した。その代わり公取委が独占している専属告発権を廃止する予定だ。

文氏の通商公約は他の経済公約に比べ細部が不足するという評価を受けた。通商組織を産業通商資源部から外交部に移管して東アジア地域包括的経済連携(RCEP)、韓日中自由貿易協定(FTA)を締結するという方向だけを提示した。トランプ米大統領が「韓米FTA再交渉または終了」を主張しているが、文氏は「軍事同盟とFTAを基礎に韓米間の戦略的関係を強化する」という原則だけを明らかにした状態だ。

LG経済研究院のキム・ヒョンジュ研究委員は「サービス収支まで考慮すれば韓米FTAは米国に決して不利ではない協定という点をトランプ政権と米議会に十分に説得していく必要がある」と注文した。

◆外交・安保

韓半島(朝鮮半島)をめぐる厳しい外交安保環境は、文在寅氏が真っ先に突破しなければいけない難題の一つだ。文氏が公約で主張した対北朝鮮基調は「大胆な韓半島非核化平和構想」。北朝鮮の「先に行動論」の代わりに北朝鮮と米国を含む関連当事国の同時行動を引き出すというのが、文氏が明らかにした構想の核心だ。具体的な方法論について文氏は「北が十分に検証された核凍結をすれば、これに相応して韓米軍事合同訓練を縮小調整する形で段階別措置を取ることができる」と説明した。これは2005年の6カ国協議で合意した9・19共同声明の基本精神である「行動対行動」原則と相通じる。

しかし文氏は北朝鮮が6回目の核実験など高強度戦略挑発を敢行する場合、こうした「ニンジン」は水の泡になるという警告も明確にした。キム・ヒョンウク国立外交院教授は「北が保有国の意志を見せ続ければ、新政権も交渉は難しくなるしかない」と話した。

ひとまず文氏は北朝鮮の核問題で南北が好循環の突破口を見いだせば本格的な交流・協力をするという方針だ。また人道的レベルで離散家族再会行事の再開にも集中する方針だ。しかし前例を見ると北朝鮮が離散家族再会の見返りにコメ・肥料支援、開城(ケソン)工業団地の再稼働、金剛山(クムガンサン)観光再開などを要求する可能性が高い。文氏は「北が核を凍結し、その土台の上で交渉テーブルに出てくれば、その段階で開城工業団地の稼働と金剛山観光を再開することができる」と述べた。

カギは北朝鮮が非核化を前提に対話再開の最初の段階となる「検証可能な核凍結」に応じるかだ。これに関し文氏は「朝米関係が正常化し、制裁が解除されれば(核開発に使用した)費用よりはるかに多くの補償を受けることになる。北が反対する理由はない」と説明した。

文氏が強調する韓国主導の北核問題解決のためには周辺国との協力が必須だ。しかし懸案が山積している。高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓半島配備問題は、新政権の対米・対中外交が第一歩をどう踏み出すかとも直結している。

文氏は在韓米軍のTHAAD配備について「次期政権で国会の批准・同意を受けるべき」という原則だけを明らかにし、意図的に戦略的あいまい性を維持した。2日の米ワシントンポストのインタビューで「韓国がTHAAD問題を民主的に処理する時間がもう少しあれば、米国は韓国国民からより大きな信頼を受けるはずであり、韓米同盟はさらに強まるだろう」と述べた。

旧日本軍慰安婦合意も調整が避けられない見込みだ。文氏は政策公約集で12・28合意の再協議などを通じて、被害者が認めて国民が同意できるレベルの合意を導き出すと主張した。しかし慰安婦被害者団体側は日本が法的責任を認めて刑事賠償をするべきだという立場である一方、日本は合意上の義務を果たしたと主張しているため、再協議は難航が予想される。

◆政治

文在寅政権は「統合」と「積弊清算」の公約を適切に調和した国政運営を見せる必要がある。文氏は「大統合政府構成のために陣営を分けず、合理的進歩から改革的保守まですべて共にする」と述べ、統合の意志を明らかにした。

文氏が公約集で明らかにした公約1号は「朴槿恵(パク・クネ)・崔順実(チェ・スンシル)国政壟断積弊清算」だ。このために積弊清算特別調査委員会(仮称)が設置される。文氏は「李明博(イ・ミョンバク)政権の4大河川不正なども再調査し、不正に蓄財した財産があれば回収する」と約束した。また文化界ブラックリストと国定歴史教科書も積弊だと規定した。入試・私学不正に関与した大学は政府の支援も中断する方針だ。

パク・ミョンホ東国大政治外交学科教授は「少数与党の政局で、積弊清算過程で鮮明性を強調する野党の強い反発が予想される」とし「この場合、政府組織法の国会処理、国務委員人事の聴聞会通過などが遅れ、新政権初期の国政運営に負担要因となるだろう」と予想した。

文氏の青瓦台(チョンワデ、大統領府)は「開かれた青瓦台」を目指すとみられる。最も目を引くのは大統領執務室を青瓦台から光化門政府庁舎に移転するという公約だ。「青瓦台-景福宮(キョンボックン)-光化門-西村(ソチョン)-北村(ブクチョン)-宗廟(チョンミョ)」などを歴史・文化の町とし、市民の憩い場とする計画だ。大統領の24時間を公開し、人事システムも透明化すると明らかにした。

文氏は歴代大統領の主要統治手段だった検察・国家情報院・監査院など4大権力機関に対する権限も手放すと公約した。まず高位公職者の不正行為に対する捜査と起訴を担当する高位公職者不正捜査処(公捜処)を設置する。また検察が現在独占している捜査権と起訴権を分離し、捜査権を警察に移すと約束した。

国家情報院は国内情報収集業務を全面廃止し、対北朝鮮・海外・安保テロ・国際犯罪を担当する「海外安保情報院」に改編すると主張した。監査院は会計検査権を国会に移管し、国会所属の会計検査機関を新設すると提示した。

文氏は選挙権年齢と国会議員・自治団首長・地方議員の被選挙年齢を18歳に引き下げ、政党加入年齢制限を廃止し、普遍的な政治参加を拡大する案を出した。文政権は反腐敗政策を推進するため独立的な腐敗防止機構の国家清廉委員会(仮称)を設置し、賄賂・背任・横領・収賄など重大腐敗犯罪に対しては量刑を強化する。また大統領の赦免権を制限する方針だ。

防衛事業の不正は処罰水準を利敵罪に準ずるよう強化すると述べた。防衛産業の業者が不正な方法で得た利益に対しては懲罰的加算金を大幅に引き上げ、一度でも摘発されれば直ちに除去する。兵役逃れ、不動産投機、脱税、偽装転入、論文盗用を5大不正と見なし、関与した公職者は高位公職から排除する方針だ。改憲に関し、文氏は2018年初めまで改憲案をまとめ、同年6月の地方選挙で国民投票を実施すると明らかにした。

◆社会

文在寅氏は福祉分野の政府支援を大幅に増やす予定だ。文氏は大統領選挙の過程で基礎年金の引き上げと児童手当の新設を主な福祉公約として強調した。

公約がそのまま実現する場合、所得下位70%に属する満65歳以上は来年から月20万ウォン、2021年以降は30万ウォンの基礎年金を受けることができる。現行の基礎年金は所得水準と財産に基づき月10万ウォンから20万ウォンまで差別支給されている。

「認知症国家責任制」も文氏の公約だ。認知症安心病院の設立、全国認知症責任病院の指定、地域社会認知症支援センターの拡大、認知症医療費90%の健康保険適用などが細部案となっている。

文氏は満0-5歳を対象に1人あたり月10万ウォンずつ支給する児童手当も新設すると公約した。15歳以下の子どもの入院診療費の本人負担率を5%に引き下げる「児童入院診療費国家責任制」導入計画も明らかにした。また育児休暇の給与上限額を現在の100万ウォンから200万ウォンに引き上げることにした。国公立保育施設を利用する児童の比率も40%に高める計画だ。ヌリ課程(満3-5歳無償保育)に必要な追加予算を中央政府予算(国庫)で支援する内容も公約に含めた。すべて少子化対策の一環だ。

文氏は高校・大学入試制度改編構想も明らかにした。外国語高校、国際高校、自律型私立高校を一般高校に転換し、一般高校と特別目的高校の入試を同時に行うと約束した。進路・適性を考慮した高校単位制(DIY型教育)も推進する。大学修学能力試験を絶対評価に変更するなど大学入試制度の改編も予告した。

主な労働公約には「定時退勤法」と呼ばれる年間1800時間台への労働時間短縮、最低賃金1万ウォンへの引き上げ(2020年まで)がある。

しかし世の中に無料はない。ソウル大社会福祉学科のグ・インフェ教授は「福祉公約の実行に必要な財源は共に民主党側の推算でも年35兆ウォンにのぼる」とし「財源確保のための増税には反発もあり、結局は公約の一部をあきらめたり範囲の縮小、段階的実行などに後退する可能性もある」と話した。

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