ある面で見れば過去の何人かの不幸な大統領もこうした極端な陣営間争いの受恵者であり犠牲者だったかもしれない。こうした自己破壊的政治生態系が形成された理由は最近の世の中で韓国国民の精神を支配してきた２つの遺産から抜け出せなかったためだ。ひとつは南北分断状況が長く続き極端な理念的偏見が政治理念化され、他のひとつは朴正熙時代に対する郷愁と、金大中（キム・デジュン）・盧武鉉（ノ・ムヒョン）の転生を夢見る人々の執着が互いに対立しそれぞれ政治遺産として相続したことに起因する。

こうした浅薄な政治生態系は荒廃した人物生態系を作った。陣営に入れず部外者になれば政治家としての生き残り自体が難しく、内部者になれば楽なことこの上ない陣営政治生態系でどのように知性と野性を兼備した大人物が出てくることができりだろうか？　国の安危よりは組織、陣営の安寧と強固な一体感がさらに重要な政治風土でどのような政治家が国の将来のために命も捧げることができる大人物に成長できるだろうか？　陣営に背負われて成長した小さく実っていない人物が帝王的大統領の座についてみたらすべてのものが難しく恐ろしい。そして相手方陣営の敵対的攻撃を避けるため自身の陣営に隠れてみたら自らますます小さくなり失敗した大統領になったのではないだろうか？

もう陣営間の亡国的争いをここで終息させよう。そうでなければ近づいてくるとても特別で奇異な未来に共倒れになりかねないためだ。いま韓国は対内外の国政危機、国民の胸中の深い傷と信頼の危機、世界政治・経済地形の急反転の中で大きく揺れている。このような環境で韓国の国政を１人の人、ひとつの陣営が閉鎖的に運営するのは適切でも可能でもない状況だ。したがってこれからはさまざまな政治勢力が力を集め国政を円満に遂行する分権と協力政治で国難を克服しなければならない。

幸いにもいま両陣営内部で理念的分化現象が起きており、大統領候補の中にはこうした時代精神に合致する人物も多く登場している。国民が今回の選挙で中心をしっかりとらえて分権と協力政治で国政を安定させるという賢明な候補を大統領に立てなければならない。そして大統領を中心に改憲など関連制度を改編し陣営文化を創造的に破壊することによって政治勢力間の協力政治の慣行を定着させる契機にしなければならない。いまはみんなが朴正熙への回帰、盧武鉉の転生という無駄な夢から覚め、まともな精神に戻り両陣営間の和解、共存、共栄の時代を開かなければならない。

鄭徳亀（チョン・ドック）ＮＥＡＲ財団理事長


【コラム】両陣営間の亡国的争い、ここで終わらせよう＝韓国（１）