「非常に独創的で斬新なデザインに感動した」「ユニセックスな感覚が気に入った」「独自の哲学を服で的確に表現していて印象深かった」

今月初め、英国ロンドンで開かれた「Ｈ＆Ｍデザインアワード２０１６」最終審査で審査委員がファイナリストの韓国人デザイナーのチョン・イノクさん（２２）に送った賛辞だ。審査委員は仏トップブランド「バルマン」のクリエイティブ・ディレクターであるオリヴィエ・ルステン、映画女優のケイト・ボスワース、フォトグラファーのニック・ナイトらファッション界のそうそうたる重要人物たちが務めている。

「Ｈ＆Ｍデザインアワード」はスウェーデンのファストファッションＨ＆Ｍが国際的に才能のある新進デザイナーを発掘するために毎年開いているデザインコンテンスト。世界１９カ国にあるデザインスクール４０校の卒業予定者または卒業生だけに志願資格を与えていることからレベルが非常に高い。ことしで５回目を迎える今大会の優勝者はロイヤル・カレッジ・オブ・アート（ＲＣＡ）卒業生のハンナ・ジンキンスだったが、審査委員は「ファイナルリスト８人のファッションセンスが本当に素晴らしく、優勝者を決めるのが非常に難しかった」と吐露するほどだった。

来年２月にＳＡＤＩ（サムスンデザイン芸術学校）卒業予定のチョンさんは村上春樹の小説『緑色の獣』にインスパイアされて傷ついた少年の孤独をテーマにした衣装４着を発表した。ロンドン現地で有名スタイリストとコラボレーションをしてミニファッションショーを開いた。チョンさんは留学には行かず国内だけで勉強した“国内派”だ。韓国内で勉強したデザイナー志望生が米国パーソンズ・スクール・オブ・デザイン、英国ＲＣＡやセントラル・セントマーチン芸術大学、ベルギーのアントワープ王立芸術アカデミーなどファッション名門大出身者と競い合って優秀な成績を収めた背景にはチョンさんのしっかりした人生設計があった。

２０日、インタビューに応じたチョンさんは「服が好きでファッションデザイナーになることに決心した後、学位よりは実務に強くなりたくて大学進学ではなくデザイン専門機関を選んだ」とし「大多数の人々があまり好きではないマイナーな好みが、かえって創作のためのコンテンツを築く時に役立った」と話した。ハリウッド映画よりは古典フランス・ドイツ映画が好きだったため、自然と吹き替えや字幕のない原語の映画に親しむようになった。好きな小説は英語で読んだ。このように実らせた外国語の実力が今回の最終審査で大きく役立った。

チョンさんは「デザイナーの哲学や主題意識を説明しながら、いかにして服で表現したのかプレゼンテーションしなければならなかった」とし「ファッションだけでなく、どの分野でもコミュニケーションが正しくできないと世界のステージに上がれないことを実感した」と話した。

女性ではあるが男性の服に魅力を感じていたチョンさんは、男性服を普段着としていたマイナーな好みが功を奏して今回のコンテストでは性別の区別が曖昧なユニセックスルックを披露して好評を受けた。チョンさんは「私の服やブランドのことを考えたら特定イメージが浮び上がるほどキャラクターの強いデザイナーになりたい」と抱負も明かした。