「情報を無限に直ちに公開する“透明性”が信頼を生むという。しかし前後が逆だ。信頼できない社会なので透明性を要求しているだけだ。透明性に対する要求は結局、自発的な奴隷があふれる統制社会をつくり出すだろう」。

２０１２年に報道機関と出版界に『疲労社会』ブームを起こした在独哲学者、ベルリン芸術大学のハン・ビョンチョル教授（５５）。今度は新刊『透明社会』（文学と知性社）を持って韓国を訪れた。

前作『疲労社会』で、「自由」がむしろ自己搾取を生んで自らを枯渇させる現代人の矛盾を指摘し、ドイツだけでなく韓国でも話題になった。「透明性が統制社会を作る」という内容の今回の新刊は、２０１２年にドイツで出版された当時、『疲労社会』よりも大きな衝撃を与えたという。

ハン教授は１１日、ソウル歴史博物館付近の料理店で開かれた記者懇談会で、「透明社会の無制限的自由、コミュニケーションは全面的な統制と監視に急変するだろう」と述べた。

ハン教授の主張が衝撃的だったのは、本が出版された２０１２年当時にドイツで政治・経済権力の透明性を要求する声が高まっていたからだ。クリスティアン・ヴルフ元大統領の不正疑惑が広がり、ドイツでは透明性が民主主義と効率性を高めるという期待感が強かった。

しかしハン教授はこうした期待の声に正面から反論した。ハン教授はまず政治を眺める有権者の視線を批判しながら話した。「現代の有権者は消費者であり野次馬だ。共同体を一緒に作ろうという考えはあまりない。消費者として政治家という納品業者に透明性を要求するだけだ。この時に要求する透明性は、政治に対する真の関心でない。スキャンダルを楽しみたい野次馬としての欲望だ」。


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